「自分は平凡」と思う人に伝えたい思考の変え方 日本が誇る「発明家」はこうやって考えている
われわれは、現在の延長で物を考えがちである。妄想は、今あるものを飛び越えて生まれるものであり、だからこそ「新しい」。いや、何かを妄想しているとき、最初からそれが新しい発想だとは自分でもわかっていないかもしれないのだ。むしろ「なんでこうなっていないんだろう」「こっちのほうが自然じゃないだろうか」と漠然と思っているだけで通り過ぎてしまう場合も多い。
だから、妄想によって「新しいことを生み出す」には、思考のフレームを意識して外したり、新しいアイデアを形にし、伝えたりするためのちょっとしたコツが必要だ。
モヤモヤした妄想は「言語化」で整理する
では、自分が抱いた妄想をどうやって形にしていくのか。
妄想レベルのアイデアは他人どころか本人にも、その意味や面白さがはっきりとわかっていないことがしばしばある。モヤモヤしたイメージが頭の中で膨らんでいて、自分では「なんとなく面白そう」と感じているけれど、実はまとまった形になっていない。
そんな状態で人にアイデアを話しても、お互いに雲をつかむような感じになってしまう。たとえ自分ひとりでやるとしても、モヤモヤしたままでは何も進まない。したがって、妄想を実行に移すには、まずは自分の思考を整理することから始めなければいけない。
では、どのようにモヤモヤした妄想を形にするか?
発想法にはいろいろな技法があるが、私が大事にしている思考ツールはとてもシンプルに「言語化」だ。言語化すれば一撃でわかる。モヤモヤとした頭の中のアイデアをとにかく言語化してみることで、そのアイデアの穴が見えてきて、妄想は実現に向かって大きく動き出す。
私たち研究者は、自分たちの研究対象のことを「クレーム」という言葉で表わすことがよくある。日本では苦情や抗議を意味するカタカナ語として定着しているけれど、もともと英語の「claim」は「主張」や「請求」といった意味だ。
クレームで重要なのは短く言い切れることだ。そして、それが本当かどうかが決着(確かめること)できそうなことだ。たとえば、遺伝子研究について、クレームではこんなふうに言い切る。
「DNAは二重螺旋構造をしている」
何を主張しているのかを具体的に言い切っているクレームだ。
クレームは「メモ」とは違う。私はふだんから何か思いつくとノートにキーワードやイメージ図などをメモしているが、誰にでもわかるようには書いていないから、モヤモヤしているという点では頭の中の妄想とあまり変わらない。そうではなく、自分にも他者にもわかるように整理したのがクレームだ。
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