NAロードスターがマツダ電動化の鍵となる訳 「MX-30」と似ていると感じた背景にあるDNA

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運動性能に大きく寄与している「エレクトリック・Gベクタリング・コントロール・プラス」の開発責任者によると、近年のマツダ車に搭載されているGベクタリング・コントロールは、そもそもEV向けとして開発したという。

実験車両としては、2010年代にアメリカ・カリフォルニア州のZEV法(ゼロエミッション・ヴィークル規制法)への対応を中心として、日本では官公庁向けにリース販売した「デミオEV」を使ってきた。

「デミオEV」は、日本では2012年から地方自治体や法人に向けてリース販売された(写真:マツダ)

そのため、MX-30 EVについてはこれらの知見が最大限活かされている。

こうした運動制御の専門家の目からは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関はエンジン回転数域によって各種制御が変わることや、エンジンの振動やエンジン自体の揺れなどがあり、相対的に「EVのほうが運動制御はやりやすい」と指摘する。

結果的に、上下左右の加速度Gの変化に対してシームレスな動きが実現できており、これがドライバーに対する自然な操作感覚につながっているのだ。

MX-30 EVとNAロードスターが似ている理由

また、マツダはEVで、車両が停止状態から走り出す際に“いかにスムーズに動くか”を追求した。

この領域では、各種のギアが強いトルクで組み合うときに音や振動が出やすく、一般的なEVでは、あえて強いトルクで発進加速の強さを主張することにより、この領域での課題に対処する場合が多いとマツダは見ている。その指摘のとおり、MX-30 EVモデルの発進はゆったりと滑らかだ。

モーターなど電動ユニットの隣に大きなスペースがあり、ここに2022年発売予定のレンジエクステンダー用ロータリーエンジンが搭載される(筆者撮影)

回生ブレーキについても人の感覚を重視するため、あえてフットブレーキでの回生力を主体として、ブレーキの踏み応えと減速Gとのリニア感を高めたという。このような、EVならではのさまざまな制御によって電動化による人馬一体が実現し、MX-30 EVモデルは、ドライバーにとって「しっくりくる電動車」となっているのだ。

さて、オンライン意見交換の最後、竹内氏に「MX-30 EVモデルとNAは、どこか似ている気がする」と聞くと、ハッとした表情で次のような裏話をしてくれた。

「実は、私自身がNAオーナーで、MX-30のデザイナーもNAオーナーだ。MX-30開発を始めた5年ほど前、ふたりでNAのオープンカー感覚をクローズドボディのクルマで実現できないかという話をしていた。MX-30にNAのDNAがあってもおかしくはない」

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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