景気が悪いのにやたら株が高い「違和感」の正体 街で目にする風景と経済指標が異なるからくり
次に海外経済に目を向けると、1月のアメリカの小売売上高の異常値的な強さが目を引いた。強さの背景にあるのは、同国議会が昨年末に決定した1人当たり600ドルの給付金だ。同国の消費者は1月中旬までに支給が完了された給付金を直ちに消費に回したもようだ。
個別にみると家具(+12.0%)、電子製品(+14.7%)、衣料(+5.0%)、スポーツ用品(+8.0%)、百貨店(+23.5%)、オンラインショップ(+11.0%)といった具合に2桁の伸びを示すものが多く見られた。自動車、ガソリン、建材等を除いたコア小売売上高は前月比+6.0%、前年比では+11.8%と極めて強く、前年比の伸び率は1990年以降に経験したことのない伸びであった。
「需要先食い」の懸念も
ここで1つリスク要因にも触れておこう。まず認識すべきは、上記で示した消費は基本的に「財(モノ)」であるということ。財消費の行方を読むにあたっては、その特有なパターンを考慮する必要がある。
というのも、サービス消費と違って「前倒し購入」が可能な財消費は、将来の需要を先食いしてしまうことがしばしばあるからだ。コロナ禍で外食や旅行、エンターテインメントなどといったサービス消費が制限されるなか、お金の使い道に悩んだ消費者が財(含む住宅)の購入を前倒しした可能性があり、そうだとすればこの先は反動減を覚悟しなければならない。
参考事例としては、日本の家電エコポイントがある。商業動態統計で家電量販店が含まれる「機械器具小売業」をみると、エコポイント政策実施中の販売好調とその後の反動がきれいに見て取れる。消費動向調査(内閣府)によると主要家電の平均使用年数は10~15年であるから、反動減はすぐには終わらなかった。
もちろん現在のアメリカや世界の状況が、当時の日本ほど極端でないとはいえ世界の消費動向を読むうえでこの点は考慮しておく必要があるだろう。また日本株視点では、これまでの上昇が製造業主導であったことを踏まえる必要がある。地味ながら重要なリスク要因かもしれない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら