ホンダ、次期社長が超えるべき「2つのハードル」 6年ぶりのトップ交代で託された「EV戦略」

拡大
縮小

こうした改革を進めた八郷氏からバトンを引き継ぐ三部氏にとって、大きな課題は2つある。1つ目は四輪事業の収益性の改善だ。

新型コロナ前の2020年3月期決算でみると、全社売上高の約7割を占める四輪事業の営業利益は1533億円で、売上高営業利益率はわずか1.5%に過ぎない。過去の拡大路線のツケが顕在化したためで、ここ数年は、対照的に高い収益性を誇る2輪事業(2020年3月期の営業利益は2856億円)がホンダの業績を支える構図が続いている。

三部新社長の下、ホンダは2021年以降に投入する新型車に「ホンダアーキテクチャー」と呼ぶ新しい設計手法を導入する。車種を超えて主要な部品の共通化を図り、コストダウンや設計・開発の効率化につなげる狙いだ。3工場の閉鎖とこうした新たな合理化の取り組みにより、どこまで収益性を改善できるかが当面の注目点だ。

最大の課題は電動化対応

そして、三部氏にとって最大の課題が、脱炭素社会に向けた本格的な電動化対応だ。日本で販売する新車の6割を占めるなどHV(ハイブリッド車)では先行するが、HVはあくまで本格的なEV時代到来までのつなぎの技術。欧州の環境規制対応で2020年に初の量産型EV「ホンダe」を日欧で発売したものの、その年間販売計画は約1万台にとどまる。

北米ではGMとEVの共同開発を進め、2024年にGMのプラットホーム(車台)と電池を用いたEVを2車種発売する。しかし、日本などでどのようにEVを開発、展開していくかは目標を含めて明確な方針を示しておらず、本格的なEVシフトに動き始めた欧米勢に比べ出遅れ感は否めない。ホンダ独自のEV戦略をどう描いていくかは今後の大きな宿題だ。

三部氏は新社長としての自身の役割について、「将来への成長の仕込みを加速させ実行に移すこと。八郷が固めた地盤にホンダの未来という建物を建てることだ」と語った。エンジニア出身ゆえに、電動化技術への知見は深い。四輪事業の収益性を改善させつつ、将来に向けた本格的なE Vシフトをいかに進めていくか。自動車産業が大変革期を迎えている中、三部氏の手腕にホンダの未来が懸かる。

東洋経済プラスで配信している「ホンダ新社長に託された課題」では、過去の『週刊東洋経済』に掲載した八郷隆弘社長や伊東孝紳前社長などのインタビューを無料でお読みいただけます。
ホンダ、経営と研究の2トップが抱く「大転換期」の危機感
インタビュー/八郷隆弘社長「ホンダは復活する。課題は見えている」
インタビュー/伊東孝紳社長「失敗は真摯に反省。感受性が欠けていた」
横山 隼也 東洋経済 記者

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よこやま じゅんや / Junya Yokoyama

報道部で、トヨタ自動車やホンダなど自動車業界を担当。地方紙などを経て、2020年9月に東洋経済新報社入社。好きなものは、サッカー、サウナ、ビール(大手もクラフトも)。1991年生まれ。

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