固定資産税を払う人がたまげる鑑定の仰天裏側 業界団体に「丸投げ」の「経過措置」が20年超続く

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水戸市は8人が5万9000円(消費税抜き、以下同)、4人が5万9500円で出したが、このうち2業者が那珂市には4万8500円で出した。那珂市は提出した4業者が同額だった。

別の水戸市の業者は鉾田市には4万9000円の見積書を出した。5業者が4万9000~4万9500円で出したのに合わせてのことか。ところが、この水戸市の業者は、競争入札の笠間市では約2万9000円で落札した。

同じ不動産鑑定士が随意契約の水戸市と鉾田市に出した見積書。市別ではほかの鑑定士とほぼ同額だが違う市を比べると、1万円の差がある。入札ではさらに低く契約した(筆者撮影)

これでは、自分が適正と考える価格ではなく、市町村ごとの相場に合わせてそれぞれが業者間でまるで申し合わせたように金額を決めているようにも見えなくない。この業者は「それぞれの時期の忙しさなどに応じて合理的に積算した結果だ」などと説明した。

見積書の金額も中身も不思議なほど一緒

常陸太田市は4人が4万8000円で、1人が5万円だった。同額の4人が、市と随意契約した鑑定士協会のもとで仕事をした。見積書にはその価格を出した積算もついているが、4人は「取引事例の収集・整理」といった細目まで同じ積算表を使い、それぞれにかける時間も同じで、時給が1500円だという点まで一緒だった。

常陸太田市に出された5人の不動産鑑定士の積算書のうち、仕事をした4人は細目まで同じで、それぞれにかける時間も全く同じになるという内容だった(筆者撮影)

先述の4業者が同額の那珂市には、鑑定士協会も「事務費」の見積書を出している。それは、県内9670地点を担当する前提で、市町村を越えた評価額のバランス調整などの名目で開く会議にかかる経費、評価システムの経費、事務局経費などとして総額約3500万円がかかるとしている。その結果、1地点当たりを3600円と割り出して、鑑定士への報酬の4万8500円と合わせた5万2100円を1地点当たりの合計額として見積もりした。

茨城県不動産鑑定士協会が那珂市に提出した「協会経費」の明細の一部。協会と契約しない市町村では支払われない「幹事」などへの支出も含まれている(筆者撮影)

この事務費には、それぞれの市町村の仕事を請け負う鑑定士のとりまとめ役の「幹事」に「1人8万円」、県内を4つに分けたブロックごとの幹事に「1人5万円」を払うことも盛り込まれている。しかし、市町村幹事の経験がある永井さんはこの「手当て」をもらった記憶がなく、同県のほかの複数の幹事経験者ももらったことがないと話している。

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