固定資産税を払う人がたまげる鑑定の仰天裏側 業界団体に「丸投げ」の「経過措置」が20年超続く

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鑑定士にとって最も重要で、基本になるのは、なんといっても所管官庁の国交省が発注する公示地価だ。3つの公的地価は1月1日時点なので、公示地価で調べた土地の取引事例などは流用される。いまは、取引事例を入れて、評価地点の条件を入れれば自動的に評価額を算出するパソコンソフトもある。永井鑑定士は「市町村間のバランスといいますが、公示地価は会議を重ねて決めているので、そことの調整で決まる固定資産税の評価に大げさな会議は必要ありません」と指摘する。

茨城県不動産鑑定士協会には昨年12月1日、ファクスで市町村との契約などについて取材依頼を送った。県協会からは2月8日に「固定資産税の地点が多数ある等の事情を踏まえて、市町村から一定の事務作業等に関するご依頼を受けており、その費用をいただいております。個々の市町村との契約内容やそれに関連した事項等につきましては、回答を差し控えさせていただきます」との回答が来た。日本不動産鑑定士協会連合会にも昨年中に送ったが回答はなかった。

「当分の間」といいながら20年以上が経過

もともと、固定資産税の評価に鑑定評価が入ったのは、1994年の評価替えの際、「公示地価の7割」が導入されたことがきっかけだった。それまでは市町村の税務課職員が算出していたが、公示地価の2割程度に抑えられていた。これは実質的な大増税なので、信頼性確保のために鑑定士が大量動員されたのだ。当初は混乱もあったので、自治省(現総務省)は協会が市町村と契約し、調整役をする方式を導入した。2000年の評価替えでこの方式は廃止されたが、契約方法は自治体の判断とされたので、その後も多くの市町村が続けている。

総務省が定める「固定資産評価基準」は、「経過措置」として、鑑定評価を利用することを定めている。「当分の間」といいながら、すでに20年以上が経過した。

政府の規制改革推進会議の専門委員も務める慶応大法科大学院の石岡克俊教授は「国に対する自治体の自立性という問題はあるかもしれないが、同じ公示地価を基準として算定されているのに、行政の縦割りのために2重、3重に税金が使われているのは非効率だ」と指摘している。

ことは税金を集めるための税金の使い途の問題だ。役割を終えた経過措置はさっさと見直して、3つの公的地価は一元的に運用してもらいたい。

松浦 新 朝日新聞記者

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まつうら しん / Shin Matsuura

1962年愛知県生まれ。東北大学卒業後、NHKに入局。1989年朝日新聞入社。東京本社経済部、週刊朝日編集部、特別報道部、経済部などを経て、2017年4月からさいたま総局。共著に『ルポ 税金地獄』『ルポ 老人地獄』(ともに文春新書)、『電気料金はなぜ上がるのか』(岩波新書)、『プロメテウスの罠』(学研パブリッシング)ほか。

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