英「ワクチン接種」、鉄道会社が担う重要な役割 「大型会場」になった競馬場最寄り駅に停車
しかし、ワクチン接種の招待状を受け取った人々からは「予約が入らない」という苦情も多く、NHSとしては、ワクチンの供給状況を見ながら、より規模の大きい接種会場の設置を進めている。そんな中、ロンドン西郊外のレディング(Reading)に近いニューブリー(Newbury)競馬場が大型接種会場の1つとして選ばれた。
ニューブリー競馬場には鉄道駅が隣接する。同駅は、ロンドンとイングランド西部を結ぶ幹線鉄道の途中にあるローカル駅だ。普段は1時間に1本走る普通列車が停まるのみだが、競馬催行日には普段なら通過している列車も臨時停車したり、臨時列車を投入したりして観戦客をさばくという。
接種のために特急臨時停車
このルートを運行するオペレーター「グレートウェスタン鉄道(GWR)」は、同競馬場でワクチン接種が始まるのを機に、ロンドン・パディントン駅をハブに運行している都市間高速列車(インターシティ・エクスプレス・トレイン=IET)のうち、上下合わせて17本を競馬場駅に臨時停車させることにした。これによって同駅に停車する列車は30分に1本程度となり、接種に出かける周辺住民の利便性が大幅に向上した。
パディントン駅を出入りするIETといえば、日立製作所が受注し、主に英国工場で組み立てられた車両「クラス800」が使われている。GWR向け369両(5両編成36本、9両編成21本)は2018年に納入が完了。これにより、旧型の特急車両で1975年から走っていた高速車両「クラス125」は全て退役している。
高速車両で走る優等列車を臨時停車するとなると「特急料金」の取り扱いが気になるかもしれないが、英国の鉄道にはそもそも特急、急行料金の設定はなく、普通列車でも最速のIETでも乗車券だけで乗れる。老齢パスを使い、無料で接種に向かう高齢者も多いだろう。
GWRによる臨時停車も奏功し、同競馬場では1日当たりの接種対応人数が1000人に達したという。ちなみに、接種ブースや待合室は競馬場の観覧スタンドの下にある屋内スペースを使って臨時に作られている。
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