知っていても意外と説明できない「SDGs」の本質 SDGsでいうところのサステナブルとは何か

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しかし、残念ながらこうした問題を止めることは、すなわち経済の発展を止める、あるいは後退させることにもなるのです。これは「経済を成長発展させる」という資本主義をここまで発展させてきたエネルギー源とも言える考え方とは相いれないものです。

SDGsはこうした行き詰まりに対し、本質的な解決を図るための提言です。「経済発展をSustain(維持)する」一方で、その発展したいというエネルギーで「諸問題を解消する」ということです。つまり、資本主義、企業活動というワードが「サステナブルな」の本当の主語なのです。

SDGsとは企業が発展することをやめ、慈善活動をすることを求めているように誤解しそうになりますが、そうではありません。むしろ発展し、利益をどんどん出すことを目指してよいのですが、その結果、社会がいい方向に向くような経済の仕組みを経済界全体で作り上げようということなのです。

必要なのはシンパシーでなくエンパシー

とはいえ、本当にそんなことが可能なのでしょうか。

SDGsが実現可能なゴールであるということを理解する例として、ダイバーシティーとインクルージョン、それからエシカルという言葉についても少しその意味するところを掘り下げてみたいと思います。

最近女性に関する東京オリンピック関係者の発言が大きな話題になりました。これはオリンピック、パラリンピックがダイバーシティーとインクルージョンいうことを大きなテーマにしているイベントであることから、看過できない問題となったといえるでしょう。今回の一件はダイバーシティーとインクルージョンがもはや国際的な常識となっているという例かと思います。

ちなみに、ダイバーシティーは「多様性」ですが、インクルージョンは「包摂」と訳されているようです。包摂は日本語としてちょっとわかりにくいですが、社会的に弱い立場にある人を排除しない、という考えです。

この弱い立場の人を排除しない、という考えを表す重要な英単語があります。それは、「Empathy(エンパシー)」です。つまり「共感」ですね。少なくない日本人がこの単語を「Sympathy(シンパシー)」と混同しがちですが、シンパシーは「同情、哀れみ」というように、イメージとしてはやや「上から」な感じです。「おくやみ」という意味もあるので、ネガティブなイメージもあります。

一方、エンパシーは、SNSなどで誰かの意見が共感を呼んで拡散される、といったときに使われるというとイメージしやすいでしょう。SNSは誰もがフラットな関係、双方向な関係ですね。同じように企業のダイバーシティーとインクルージョンは、同情やイメージアップではなく、企業や団体でさまざまな立場の人がフラットに共感しあえる組織になることを求めています。

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