京王、小田急…業績低迷なのに「異常株高」の謎 買い材料はあるのか、それともマネーゲーム?
確かに2020年9月末時点の各社の連結財務状態を見ると、京王の総資産に占める有利子負債の比率は45%で、大手私鉄の中では比較的低い水準にあるが、京王よりもこの比率が低い京成(32%)、名鉄(36%)、阪急阪神ホールディングス(39%)、さらにJRでもJR東日本(41%)、JR九州(30%)の株価が2020年のコロナ前の株価に達していないことを考えると、財務状態だけで説明がつくものでもなさそうだ。
株式市場関係者の間では「リニア中央新幹線の新駅設置で京王線の利便性が上がり、将来の利用者増による収益向上を見込んでいるのではないか」という声も上がる。リニアが停車する予定の神奈川県駅(仮称)はJR横浜線、JR相模原線、京王相模原線の乗り入れる橋本駅に隣接して設置される計画であり、2019年11月22日には起工式も行われている。
東海道新幹線が停車する新横浜周辺が大きく発展したように、橋本駅周辺でも再開発の期待は高い。起工式当日、神奈川県の黒岩祐治知事は「未来の乗り物リニアと、新しい産業であるロボットは相性がいい。リニアが開業する2027年には町中にロボットがあふれるような、日常生活でロボットを体感できるまちづくりをしたい」と話し、リニアを軸とした再開発に期待を寄せた。
しかし、静岡県の反対で静岡工区でのトンネル工事が始まらないことから2027年の開業は事実上不可能だ。工事開始時期が決まらないことには、リニアがいつ開業するかは誰にもわからない。そうなると、この状況で橋本駅を材料に京王株が買われているというのも考えにくい。
小田急もコロナ前を上回る
小田急電鉄の株価も堅調だ。2020年のコロナ前の高値は1月10日の2575円で、コロナ後の3月13日に1781円の年初来最安値をつけたが、その後株価が上昇、11月25日に3340円に達した。その後は勢いが止まったが、2月12日時点の株価は3375円。2020年1月10日の高値より31%も上昇している。
小田急の担当者は最近の株高について、「新宿の開発を含めた当社のさまざまな取り組みがマーケットで評価されたのではないか」と話す。
新宿の開発とは、小田急百貨店が入居するビルを再開発して高さ260m、地上48階建ての大型複合ビルを建設する計画を指す。2022年度に着工し、2029年度の完成を目指す。完成後は高さ243mの東京都庁舎を抜き、新宿西口の新たなランドマークとなる。小田急は再開発を視野に新宿西口駅前のスバルビルを取得していたが、スバルビルの敷地を広場にして、その分の容積率を高層ビルに上乗せしている。
完成すれば小田急の不動産賃貸売り上げが一気に増加し、収益の安定化にもつながるビッグビジネスとなる。しかし、この計画が発表されたのは昨年9月9日だが、株価はさほど反応しなかった。株価が大きく上がり始めたのはやはり11月に入ってからだ。
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