京王、小田急…業績低迷なのに「異常株高」の謎 買い材料はあるのか、それともマネーゲーム?

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西鉄の株価は、昨年の最安値は3月13日の1956円だったが、9月28日にコロナ前の高値2771円を上回る3375円の年初来最高値をつけた。だが、その後は値を下げ、2月12日の株価は3120円だ。

中小私鉄では、富士急行の株価が大きく上昇している。昨年の最安値は3月17日の株価2080円だったが、今年の2月8日には5900円に達した。2020年のコロナ前の高値1月7日の4230円を上回る。

株高の理由として、富士山に次世代型路面電車(LRT)を走らせる「富士登山鉄道」の構想が進んでいることを挙げる見方もある。往復運賃1万円で年間300万人が利用すれば事業として成立するというものだが、そもそも誰がこの事業を担うかはまったく決まっていない。

日本経済団体連合会の御手洗冨士夫名誉会長が会長を務める「富士山登山鉄道構想検討会」の構成メンバーには、富士急の堀内光一郎社長も委員として名を連ねるが、同様にJR東日本、JR東海、小田急、京王も参加している。運営スキームすら決まっていない段階だけに、この材料で富士急株を買っているとしたら気が早いと言わざるをえない。

実態は「マネーゲームの世界」

京王、小田急、富士急の3社に共通するのは、信用売り残が信用買い残を大きく上回ることだ。信用買い残を信用売り残で割った信用倍率をランキングした、2月9日時点の週間信用倍率下位ランキング(ヤフーファイナンス)によれば、全2720銘柄中、京王は5位、小田急は8位、富士急は59位となっている。信用売りとは株価が下がると利益が得られる取引であり、基本的には売り残が多いというのは、今後の株価が下がると考えている投資家が多いことを意味する。

一方で、信用売りを行った場合は期日までに株の買い戻しが生じる。株を買わなくてはいけない人がいるのだから、先回りして株を買っておけば高値での売り抜けができるかもしれない。そんな思惑から株を購入する投資家が多いと株価は下がるどころか上がってしまう。完全にマネーゲームの世界である。

そう考えると、現在の京王や小田急の株価は、株式投資の初心者が手を出すようなレベルではないということだ。

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