中国人の春節はコロナでどう変わったのか 帰省しないは新習慣になるか、一時的現象か
チャン・スファンさんは毎年恒例だった春節(旧正月)連休の帰省を今年は取りやめた。代わりに両親や16歳の息子と郵送でプレゼントを交換した。中国では新型コロナウイルス感染再拡大を巡る懸念で春節の過ごし方も変化を余儀なくされている。
中国東部の繊維メーカーで働くチャンさん(37)は「実家から箱が届いた時には涙が止まらなかった」と話す。
中国は1日当たりのコロナ新規感染者を低水準に抑え込んでいるものの、それを維持するための隔離や移動制限によって、何百万人もの工場労働者が帰省断念を迫られた。春節連休の支出への影響は避けられず、国内経済で消費を押し上げようとしている中国政府にとっては一時的な足かせになる。
中国当局は1年で最も人の移動が活発になる春節期間について、今年は道路と鉄道を含む陸路と空路、海路による旅行が延べ約12億回と、前年から20%超減少すると見込んでいる。中国北部でコロナ感染が再び確認される中で、地方政府は労働者に移動の自粛を呼び掛けており、交通機関の利用は既にコロナ前の水準を76%下回っている。工場にとどまり、割増賃金を稼ぐことにした労働者も多い。
経済の軸足を製造業・輸出から国内消費に移し、さらに所得の高い沿岸部の地域から比較的低所得の西部に富を移転しようとしている中国政府にとって、こうした状況はプラスにならない。今年は旺盛な外需に対応するため、春節連休も生産ラインが稼働。予約が集中するのは上海など東部の都市のホテルや飲食店だ。
チャンさんが勤める会社は例年なら春節に10日間休業していたが、今年の休業期間は3日にとどまる見通し。吉利汽車など大手自動車メーカーは連休中の旅行自粛を労働者に促し、休日の追加や社員食堂での食事無料提供などインセンティブを提示している。
だが、春節前後の支出額は1兆元(約16兆円)規模に上り、生産ラインの稼働を続けても減少分を穴埋めすることはできそうにない。
マッコーリー・グループの中国担当チーフエコノミスト、胡偉俊氏は「生産にはプラスだが、消費にはマイナスに働くと考えられる」と指摘。コメルツ銀行の新興国市場担当シニアエコノミスト、周浩氏は中国の1-3月(第1四半期)の国内総生産(GDP)が前期比で0.5%減少し、サービス業の減速が際立つ公算が大きいと見込んでいる。
コロナによる支出動向や消費者行動への長期的な影響を判断するのは難しいが、中国政府が打ち出す政策への影響は一時的にとどまる公算が大きい。マッコーリーの胡氏は「短期的には中国経済の不均衡が増すことになる」としながらも、「年間で見れば、人々は外出して消費できるのであれば、消費する傾向にある。移動制限で中断を余儀なくされているだけだ」と指摘した。
原題:China’s Factories Roll on, Upending New Year’s Spending Patterns(抜粋)
著者:Bloomberg News
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら