「あとは保健所にお任せしよう――。そう思っていました」
と和田さん。というのも、今現在、陽性者の対応にあたるのは保健所になっており、基本的に検査を実施した医療機関が対応するものではないからだ。
だが、4日後の朝9時。女性からクリニックに助けを求める電話がかかってきた。「自宅療養をしています。呼吸が苦しい」。
女性が訴えた症状は息苦しさのほかに、39℃の発熱や胸の痛み、そして味覚と嗅覚異常だった。和田さんは応急処置として、今の症状に対応できる薬を処方し、薬局にファックスで処方箋を送付。薬局には濃厚接触者の家族に取りに行ってもらった。
このとき和田さんは女性に「なぜ保健所ではなく、クリニックに連絡をしてきたのか」と聞いてみたという。
「女性は、『保健所に何度も電話をしたが、まったくつながらない』『担当者は決まっていないし、緊急の連絡先も知らされていない』と言っていました」
それ以来、女性からは連絡が来ない。薬が効いたのかも、自宅療養で済んだのかも、入院をしたのかもわからないままだ。
保健所が手いっぱいで対応できないのであれば
わだ内科クリニックでは、昨年夏からこれまで400人以上がPCR検査を受け、64人が陽性となった。だが、その人たちがその後、どんな状況でいるかは知らされていないという。
「医療スタッフがいる病院やホテル療養ではない自宅療養者には、臨時の主治医のような人をつけるべき。それが難しければ、せめて電話がつながる緊急の専用の相談窓口、つまりホットラインを用意しておくべきです」
自宅療養中の陽性者の対応はどうなっているのか。同クリニックがある練馬区の区役所に問い合わせたところ、次のような返答が戻ってきた。
「基本的には、保健所の職員が体調変化を把握する健康調査を実施し、何かあったときはすぐに保健所に連絡してもらうようにお伝えしています。土日などは対応職員がいないので、(24時間対応の)東京都の発熱相談センターに連絡するようにお願いしています」(練馬区広報)
また、「練馬区の医師会が用意したコールセンターでも対応している」と紹介された。しかし、ホームページを見ると24時間対応ではなく、受け付けているのは平日の朝9時から夕方5時までだった。
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