部下のやる気を削ぐ「八つ当たり上司」の対処法 相手の「怒りの原因」を考えるだけで気が晴れる

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ネガティブな感情への対処法をお伝えしましたが、たとえば家族など身近な人の機嫌が悪かったり、仕事で上司やお客さんに理不尽な八つ当たりをされたりしたときはどうでしょうか。無心で動じず……というわけにはなかなかいかないですよね。

そうやって人に強い感情をぶつけられたとき、どうすればよいでしょうか? スタンフォード大学のブレッチャートらの行ったこんな実験があります。

この実験では参加者を3つのグループに分けて、それぞれ人の表情を見せます。

(1)「通常時の表情を見るグループ」
(2)「怒った表情を見るグループ」
(3)「怒った表情を見て、その原因を考えるグループ」

この3つのグループの参加者たちの脳の活動を比較したのです。その結果、もっともネガティブな反応を示したのは、(2)の「怒った表情を見たグループ」でした。怒りの表情というのは人のネガティブな感情を誘発するのです。

一方、(1)「通常時の表情を見たグループ」にはネガティブな反応は見られませんでした。そして驚きなのは、(3)のグループです。(3)の「怒った表情を見て、その原因を考えるグループ」にはネガティブな反応は見られず、(1)の「通常時の表情を見たグループ」と同程度の反応になったのでした。いったい、何が起きたのでしょうか?

(3)のグループは、「この人は仕事で上司に怒られたんだろうな……」などと人が怒っている原因を考えるトレーニングをしてこの実験にのぞみました。つまり、「怒りをぶつけられている原因は自分ではなく、他にある」と事実を捉え直す訓練をしたのです。

ネガティブな反応を示しているときの脳の活動を見てみると、頭のうしろ(後頭)の活動が活発になります。(2)の「怒った表情を見たグループ」の参加者はみなここが活発に動いていました。

しかし、(3)のグループが捉え直しをしているときの反応を見てみると、後頭の活動は落ち着いていて、かわりに頭の前側にある「前頭葉」が活動していました。ここが、大きなポイントです。

「何事も捉え方次第」は科学的にも正しい

前頭葉は、人が進化する過程でできた「新しい脳」。つまり、「論理思考」を可能にする場所です。怒っているという事実をそのまま受け止めると感情(後頭)が刺激されるのですが、「本当の原因は別にある」と理性的に捉え直すことで、感情を生み出す脳の部位の活動がおさえられ、ネガティブな反応をしなくなりました。新しい脳で考えることによって、古い脳に考えさせなくするわけです。

「何事も捉え方次第」なんて言いますが、これはあながち間違いではありません。人の怒りには必ず理由があり、それは自分の思いどおりにいかないことがあるなど、不安や恐怖を感じているときに起きる反応です。ほとんどの場合、本人自身の問題なのです。

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ですから、不本意な八つ当たりを受けたときは、ぜひ捉え直しを実践してみてください。

「奥さんが家を出てったんだろうな……」「昨日飲み屋でぼったくられたんだな……」「株が大暴落で大負けしてるんだろうな……」など、事実である必要はまったくありません。

とにかく理由づけをするのです。強いて言うなら、ユーモアのあるほうがより楽観的に捉えられていいかもしれません。

このように前頭葉を働かせるトレーニングをすることで、人のネガティブに巻き込まれづらくなります。

堀田 秀吾 明治大学教授

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ほった しゅうご / Syugo Hotta

言語学博士。熊本県生まれ。シカゴ大学博士課程修了。ヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程修了。言葉とコミュニケーションをテーマに、言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな分野を融合した研究を展開。熱血指導と画期的な授業スタイルが支持され、「明治一受けたい授業」にも選出される。研究の一方で「学びとエンターテインメントの融合」をライフワークとし、研究活動において得られた知見を活かして、一般書・ビジネス書等を多数執筆、テレビ番組にも出演する等、多岐にわたる活動を展開している。

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