日本初、鉄道車両更新ファンドの「投資妙味」 しなの鉄道が新車導入に活用、狙いはどこに

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SR1系の導入によって、消費電力が大幅に削減される。SDGsに配慮した投資を行いたい機関投資家には投資する大義名分がある。そして個人向けにはさらなる「投資妙味」が用意されている。

実は、個人投資家が自分の好きなものに投資する場合、自分の興味対象と出資に対するリターンの線引きが難しい。10年以上前に個人向け映画ファンドというものが流行したことがある。興行収入やDVDの売り上げに応じて分配金額が決まる、出資額に応じて映画のエンドロールへの名前のクレジットや関係者向け試写会に招待されるといった映画ファンの心をくすぐる内容だったが、結局元本割れに終わったものも多く、新たな投資家層の開拓にはつながらなかった。

この点を意識したのかどうか、しなの鉄道の車両更新応援ファンドは、個人向け募集分について、1口5万円を2万5000円相当の商品購入と、2万5000円の出資に分割した。ファン向けの側面と金融商品としての側面をきちんと区別したのだ。

商品購入、金銭換算すると…

商品は、しなの鉄道の観光列車「ろくもん」の食事付きプランなど5種類。「もっと増える可能性もある」(しなの鉄道)。

しなの鉄道の観光列車「ろくもん」(編集部撮影)

この商品購入を金銭に換算するといくらぐらいになるのだろうか。たとえば「ろくもん食事付きプランペア」の場合、実際の1人当たりの料金は1万5800円なので、2人で3万1600円だ。それを2万5000円で購入できることになる。投資に直せば26%の収益率だ。ほかのコースも同程度の収益率を想定しているようだ。

商品のコースの中には、「ろくもん食事付き+115系部品取り体験セット」というものもあり、鉄道ファンの人気を呼びそう。ただし、このプランは応募者多数の場合に抽選となる。

金融商品としての側面はどうか。出資に対する分配はしなの鉄道の定期外収入の実績に基づいて計算される。定期外収入の累計が100億円に達するまでは定期外収入✕0.15%÷600口という計算で分配される。100億円に達したあとは定期外収入✕0.027%÷600口という計算で分配される。

しなの鉄道の直近の決算期である2019年度の定期外収入は14億9974万円だった。それ以前の期の定期外収入は16億円台で推移していたが、2020年2〜3月に新型コロナの影響を受け、14億円台に下がってしまった。2020年度4〜9月期は前年同期比60%減という状況だ。

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