日本初、鉄道車両更新ファンドの「投資妙味」 しなの鉄道が新車導入に活用、狙いはどこに

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そこへ加わったのが「しなの鉄道車両更新応援ファンド」という新たな車両調達手段である。個人から3000万円、機関投資家などの法人から2000万円、合計で5000万円を募集する。個人は1口5万円で募集し(取扱手数料除く)、1月14日から6月30日までの募集期間内に600口の募集を想定している。

ファンドの募集を行うのは、クラウドファンディング大手のミュージックセキュリティーズ。アーティストのCD制作費をファンから集める事業で創業、現在手掛ける分野は飲食からスポーツまで多岐にわたる。しなの鉄道と沿線活性化の取り組みで提携関係にある三菱地所が同社を紹介した。ミュージックセキュリティーズによれば、2月4日時点で出資額は1000万円を突破したという。

クラウドファンディングは、鉄道の分野でも古い車両を保存する目的などでしばしば行われている。その場合は出資に対する金銭的なリターンなど望むべくもないが、今回の“車両更新ファンド”は金融商品としての側面も持つ。毎年決算を行い、あらかじめ定められた数式に基づき、出資者に分配する。投資期間は今年7月1日から2031年6月31日までの10年間だ。

「出資者」として応援を

そもそも、しなの鉄道はファンドを組成して資金調達するのだろうか。新株発行や銀行からの借り入れといった従来型の資金調達に加えて、新たな方法を模索するということなのか。とはいえ、車両更新費用全体から見ればファンドによる調達額はごくわずか。新たな資金調達手段というには心もとない。

しなの鉄道の現在の主力車両115系。製造から40年以上が経過している(写真:YkK1/PIXTA)

この疑問に対し、しなの鉄道の担当者は、「新たな資金調達手段というよりもむしろ、しなの鉄道を応援してくれる人を増やすための新たなチャレンジである」と答えた。

鉄道ファンがお金を出し合って鉄道を応援するという取り組みはクラウドファンディング以外にもさまざまな形態がある。たとえば、複数のローカル鉄道会社が実施している「枕木オーナー」という取り組みがある。出資に対する特典として、出資者の名前が入ったプレートを枕木に貼り付けるといった施策が行われている。だが、「枕木オーナーのような取り組みは当社も過去に実施したことがあるが、寄付という形態は長続きしない」(しなの鉄道)。

お金を出した後も長期にわたって、しなの鉄道の経営に注目してもらう。そのための手段として、ファンドへの出資者という立場でしなの鉄道を応援してもらうことにしたのだ。

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