一般人が「ライブ配信で食う」までの険しい道程 「投げ銭」で安定収入を得るための数々の努力

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一気に注目度を増した有坂さんだが、継続して支持してもらうことは簡単ではない。「イベントで1位を取ったのはあくまで一時的なブーム」(有坂さん)。実際ライブ配信視聴者の多くは、時間の経過とともに別の配信者を応援するようになったり、生活環境の変化からサービスそのものを使わなくなったりする。そのためライブ配信で食べていくには、少数のビッグギフターに依存せず多くの人に支持される必要がある。

有坂さんの場合も残念ながら、当初のビッグギフターは早々に離れてしまった。自身の魅力を増やし、継続的なファンを増やすべく、視聴者がただ見るだけではなく、ライブ配信ならではの双方向のやりとりを生かして楽しんでくれる環境を作る努力をしている。

例えば、画面に波がでるギフトをもらえば溺れる演技をする、大砲が打ち込まれるギフトであればそれに驚いた様子を取る、といった具合だ。そのほかにも、ギフトに対しお礼の歌を歌ったり、占いをしたりと、さまざまな形でコミュニケーションを取り、視聴者を楽しませた。

こうした地道な努力を重ねた有坂さん。現在はライブ配信だけで生活できるまで収入が安定し、最高で月収75万円(手取り)を稼いだ月もあった。2019年末にはライブ配信一本で生きていくことを決め、飲食店などのアルバイトも辞めた。とはいえ、ライブ配信者としての試行錯誤には終わりがない。「視聴者が入れ替われば、例えばどの時間帯に配信するのがいいのかなどは変わる。状況を見極めながら今もさまざまな変更を加えている」(有坂さん)。

「人間性」や「素顔」が露呈しやすい

ライバーとして成功するかは「完全に運だと思う」と言い切るライバーもいる。有坂さんと同じく17ライブで配信を行う星優紀(配信名:Yuuki)さんは、「自分の場合、視聴者が仲間に呼びかけ、視聴者同士の横のつながりで知名度が上がった。交友関係の広い視聴者に最初に見つけてもらうことは、運がよかった」と話す。

一方で、ビッグギフターに見つけてもらったとて配信を気に入ってもらえるかは本人の腕次第だ。「ライブ配信は配信者の『人間性』や『素顔』が露呈しやすい。(技術的な面だけでなく)ありのままの姿も含めて魅力的な人にはファンも多くつく」(17ライブの広報)。その中でも、配信頻度や自身の特技を磨き続けるような努力を惜しまない人たちがトップライバーになりやすいという。

ファンがつかない間は、配信を継続していくことに孤独を感じる場合もある。「気がめいって辞めてしまうライバーも多いが、めげずに続けている姿を見てもらうことも大切」(星さん)。画面に向かっておしゃべりしているだけでラクに稼げる、という世界では、決してないようだ。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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