一般人が「ライブ配信で食う」までの険しい道程 「投げ銭」で安定収入を得るための数々の努力

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有坂さんがライブ配信を始めたきっかけは、17ライブ社員からのスカウトだった。芸能活動の一環として、保育園や児童館で「食育」をテーマに「歌のお兄さん」のような活動をしていた有坂さん。そうしたユニークな活動に注目した17ライブの社員が、友人経由で有坂さんをライブ配信に誘ったのだという。

17ライブではこうしたスカウトで始める人もいれば、自発的にアプリをダウンロードし配信を始める人もいる。「誰でも配信可能なため、自発的にライブ配信を始める人は当社で把握しきれないほど多い」(17ライブ広報)という。

そうした経緯で2019年2月からライブ配信を始めた有坂さんだが、当初は鳴かず飛ばずの日々が続く。雑談をする、歌を歌うライブ配信を毎日行っていたものの、「売り上げはひと月で1000円ほどだった」(有坂さん)。もともと人気芸能人だったわけでもない有坂さんが突然ライブ配信を始めても、視聴者を集めることはできなかった。

そもそも17ライブで人気を得るライバーには女性が多く、周囲からは「男性では成功しないのではないか」といった声も聞こえてきたという。だが、「せっかく社員の方に誘われて始めたので、とりあえず3カ月は頑張ろうと思った」(有坂さん)。

600時間耐久の配信で得た手応え

少しでも知名度と人気を得るため、さまざまな挑戦をした。その1つが、新人ライバー向けイベントへの参加だ。

17ライブでは、配信初心者向けなどさまざまなイベントを開催している。イベントでは、視聴者からもらえる「ギフト」(17ライブ上で投げ銭に当たるもの)の数などでランクを競い合う。中には、その最終順位によってテレビ番組や人気ファッションショーへの出演権を獲得できる企画もある。

イベント時、視聴者は自分が応援しているライバーを喜ばせたり、応援したりするために、その時々に求められるギフトを送る。ライバーたちも単に投げ銭をしてもらうというだけではなく、自らの夢であるファッションショーや番組出演への思いを訴え、視聴者に投げ銭をお願いする。

有坂さんもこのチャンスにかけたわけだが、当然、イベント内での競争は熾烈。そこで注目を集めるためあるイベントへの参加時に行ったのが、朝の10時から夜の21時まで長時間ライブ配信をし続けるという試みだ。イベント期間の742時間中、実に600時間、寝る間も惜しんで配信に費やした。

そんな努力によって、有坂さんはプラットフォーム内で頻繁に投げ銭を行う「ビッグギフター」の目に留まり、この新人イベントでギフト額1位を取ることに成功。当時、男性がそうした新人イベントで1位になることは珍しく、大きな話題を呼んだという。

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