トヨタだけに残る「兄弟車・姉妹車」消滅の足音 専売車種がなくなり、所有の考えも変わる中で

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ほかにも、日産には大衆車の印象が強い「サニー」に対して、兄弟車・姉妹車だった「パルサー」はやはり走行性能を重視した小型車として打ち出した。基本的な内容は同じでも、クルマとしての特徴づけを別とした兄弟車・姉妹車があった。

トヨタでも、「マークⅡ」と「チェイサー」「クレスタ」の3兄弟は、マークⅡを上級4ドアセダンの基準としながら、チェイサーはより走りを強調し、クレスタは上質さを訴えかけた。

海外でも、ことにアメリカではGM(ゼネラル・モーターズ)という自動車メーカー自体が、かつての複数のメーカーを合併したことで成り立っているため、シボレー、ポンティアック、オールズモビル、ビュイックというブランドが、高級車のキャデラックのほかにあった。そして各ブランド向けの車種を、同じ内容で作り分けていた。

カーシェアや自動運転が進めばどうなる?

例えば、「ポンティアック・ファイアーバード」という2ドアクーペは、シボレーでは「カマロ」として売られた。そしてファイアーバードがより走りのよさを強調したのに対し、カマロは気軽に2ドアクーペに乗れる印象を与えた。その結果、「セクレタリーカー」などとも呼ばれ、仕事のできる女性がお洒落に乗るクルマと位置付けられもした。

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開発や製造の手間を上手に省きながら、顧客層や販売店の都合などに適応したクルマが、兄弟車・姉妹車として事業展開に使われてきた。

ただ、将来的には今よりもカーシェアリングが普及することが予想される。自動運転の技術も一段と進化する。車を所有しないで使用するニーズが増え、運転もかなりの部分が機械任せになったときに、ユーザーの車種そのものに対するこだわりが薄れてくることも考えられる。

兄弟車・姉妹車を残してきたトヨタも全車種併売化や情勢の変化もあいまって、他メーカーと同様に兄弟車・姉妹車に頼る意味が薄れてきつつある。兄弟車・姉妹車はいずれ消えゆく運命が避けられないのかもしれない。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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