緊急事態宣言延長を説明した2日夜の記者会見では、菅義偉首相の会見手法に課題の発信力を意識した変化が見られた。内閣支持率が急落する中、国民に直接訴えて新型コロナウイルス対策への協力を求めることで、難局を乗り切る狙いだ。
菅首相は今回初めて、原稿を話者の前方に表示するプロンプター(原稿映写機)を使用した。手元のメモに目を落とす回数を減らし、テレビの前の視聴者や記者と目線を合わせて話すことができる。会見の分かりやすさを考え、感染者数の推移を示すパネルも設置した。
「私も日々悩み、考えながら走っている」。実務派として知られる菅首相には珍しく、本音を吐露する発言もあった。10都府県の緊急事態宣言延長は「日常生活やなりわいを大きく制約する」ものであり、解除地域や延長期間に関して「いろいろな考え方があることは事実だ」と悩みながらの判断だったとも説明した。
会見手法の変化について問われた菅首相は、「記者会見は国民にきちんと情報を発信し、説明責任を果たしたいと思って臨んでいた」と話した。プロンプターも「機会に応じて活用していきたい」と語った。
新型コロナ対応を巡る菅首相の言動には、野党から説明不足を指摘する声も上がっていた。
1月27日の参議院予算委員会では、立憲民主党の蓮舫代表代行に「国民に危機感が伝わらない。総理としての自覚や責任感、それを言葉で伝えようとする思いはあるのか」と激しく批判された。菅首相は「少々失礼ではないでしょうか」とした上で、「私自身は精いっぱい取り組んでいる」と反論していた。