キヤノン、上方修正後に待つ「新規事業」の難題 医療機器、ネットワークカメラは増収増益に
キヤノンが1月28日に発表した2020年12月期通期の連結決算は、売上高が3兆1602億円(前期比12.1%減)、営業利益が1105億円(同36.6%減)の大幅な減収減益となった。コロナ禍で主力の複合機をはじめとするオフィス向け事業が苦戦したほか、デジタルカメラ市場の縮小などが響いた。
ただ、足元では想定以上に回復が進んでいる。2020年7月時点の業績予想は、売上高が3兆800億円、営業利益は450億円だったが、1月14日に業績予想を上方修正。翌15日の株価は前日比一時8%を超える大幅高になり、市場からも好感された。
2021年12月期は一層の業績回復を見込んでいる。2021年12月期は売上高3兆4000億円(前期比7.6%増)、営業利益は1585億円(同43.4%増)と4年ぶりの増収増益を見込む。複合機などのオフィス事業や医療機器の回復に加え、人員削減などの構造改革が利益面で貢献するとみる。
デジカメ、インクジェットが上振れ
業績回復を牽引しているのが、デジカメやインクジェットプリンターを手がけるイメージングシステム事業だ。
2020年のデジカメ市況は厳しいスタートだった。日本カメラ映像工業会が発表するデジカメ出荷統計によると、世界的に新型コロナが急拡大した2020年4~6月のデジカメ出荷台数は、前年同期比65.3%減の約143万台に落ち込んだ。
キヤノンでデジカメ事業を手掛けるイメージコミュニケーション事業本部長の戸倉剛常務執行役員は「本当に激しい落ち込みで、販売活動や購買活動も停止して、(販売は)どん底だった」と振り返る。
ただ、キヤノンは2020年7月にフルサイズミラーレスカメラの新製品「EOS R5」などを投入。R5は50万円台と高価格にもかかわらず、生産が追いつかないほどの人気となった。2020年12月期のデジカメの売上高は前年を下回ったものの、2020年10月時点の予想を176億円上回る3477億円となった。
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