特措法、感染症法の罰則規定はなぜ問題なのか 医療機関には甘く、弱者を直撃、逆効果に終わる

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新型コロナの治療に十分対応できない理由として、日本では約8500ある病院のうち公立病院が少なく8割が比較的規模の小さな民間病院であること、166万の病床数のうち33万は精神科である、などが挙げられている。だが、少なくとも68万の急性期・高度急性期病院の病床数があるのに、1月20日時点で新型コロナ対応向けに確保されたのは約2.8万と4%にすぎない。

昨年の12月25日には厚生労働省が1病床ごとに入院患者の受け入れに450万円、重症患者で1500万円の協力金の給付を決め、1月7日には緊急事態宣言下の都道府県に対してはさらに450万円が、それ以外のところに対しても300万円の上積みが発表された。さらに、自治体独自の協力金もある。診療報酬とは別に、である。それでも、医療機関の協力は進まない。

院内感染のリスクがあっても果敢に受け入れた一部の医療従事者が過酷な状況に置かれている一方で、手厚い協力金や感染対策支援を用意されても協力しない急性期・高度急性期病院の存在価値を、日本医師会はどう捉えているのか

差別を助長する日本医師会関係者の発言

そうした指摘に対し、日本医師会は新型コロナ以外の病気への対応の必要性を主張するが、これまでは、新型コロナへの感染を恐れてお客が来ないことによる経営難への支援策を政府に求めていたのである。また、例年なら対応に追われるインフルエンザの流行が今冬はほぼ消滅している。問題点があるなら、それを解消すべく、自治体と協力して知恵を出すべきだった。

外食産業や宿泊業とは異なり、医療機関に独占が認められ、決まった診療報酬が約束されているのは、社会的インフラであるという位置づけだからだ。医療機関ばかりが特別扱いを認められ、日本医師会という開業医の利権を守る業界団体への配慮が目立つのでは、菅義偉首相の「既得権益の打破」という言葉もむなしい。

日本医師会の中川俊男会長は「国民に緊張感を取り戻さなければならない」「強制力を持った行動制限が必要」などと発言し、同様の発言は医師会関係者からたびたび出る。こうした言葉には強烈な違和感がある。国民の行いが悪いので感染が広がっているといわんばかりである。こうした発言が、感染を確率の問題ではなくスティグマ(汚点)にして、差別を助長する。時短や在宅要請に対応したのでは生きていけない人もいるということへの配慮が感じられない。

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