HSBCストラテジストが語る市場予測と投資戦略 新興国・アジアの債券に妙味、株式収益は4%台
――注目しているポイントは?
投資家にとってはドル安傾向が続くことが重要だ。FRB(米連邦準備制度理事会)のゼロ金利政策と資産購入は継続されるとみている。一部に資産購入規模の縮小を予想する向きがあるが、私はそうするとはみていない。
イエレン氏は、「アメリカは競争上の優位を獲得するためのドル安は目指さない」と明言したが、ハト派路線のFRBの金融政策、財政赤字拡大、ワクチン接種の実施による世界経済の回復、政治的不透明感の後退からすると、先行きはややドル安とする予想が理にかなっているだろう。
ただ、すでにかなりドルは安くなったので、さらに大きくドル安が進むわけではない。ボラティリティは抑えられる。ゆるやかなドル安によって、新興国の通貨が強くなり、アジアの債券や新興国の債券に妙味があり、海外の株式に追い風になる。
インフレ圧力や、長期金利の上昇は限定的
――バイデン大統領の財政大盤振る舞いで予想外に上振れするリスクはないか。市場ではインフレ期待(10年物ブレークイーブン・レート)も2%に乗せており、長期金利も1%を超えた。長期金利の上昇は続くか。
まず、そもそも需給ギャップが非常に大きい中での財政出動なので、インフレ圧力はさほど高まらないとみている。コロナ前の3.5%の失業率でもインフレ圧力に乏しかった。確かに、経済回復を織り込んでインフレ期待は上昇しているが、デフレ期待から脱却した程度だ。ここから先、長期金利がもっと上昇していくとはみていない。
また、財政支出はしやすくなったものの、依然として議会からの制約に直面する可能性は高い。上院で法案を可決するためには賛成60票が必要で、民主党の保守派議員のみならず一部の共和党議員からの支持が必要なため、大盤振る舞いをする余地はないと考えている。
そもそもバイデン大統領自身が中道だ。民主党内にはMMT(現代貨幣理論)を振りかざして、財政の健全化など気にせずにじゃんじゃんお金を出せという左派の人たちがいるが、バイデン氏はそうではなく、債務の積み上がりの問題にも一定の配慮はするだろう。
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