「アクア」が10年目でも根強く売れている理由 家電のような感覚で選べる「型落ちの魅力」

拡大
縮小

他メーカーのライバルに対して、アクアのハイブリッドシステムは優位性があった。しかし、同じトヨタの同門対決となると、古いモデルであるアクアの分が悪い。

最新のハイブリッドシステムを搭載して2020年2月に発売された「ヤリス ハイブリッド」は、燃費性能がWLTCモードで35.4~36.0km/l。アクアを含む20km/l台のライバルたちよりも、2割ほども上回る。最新モデルならではの圧倒的な数字だ。

では、最新のヤリスとアクアを比較するとどうなのか。

燃費で及ばなくとも買い得感で勝る

燃費性能や走りのクオリティという面では、最新型でありグローバルモデルとして作り込まれたヤリスに、オールドスクールであるアクアが敵うことはない。また、先進運転支援システムという点でも、アクアの定期的なアップデートは評価できるが、さすがに最新モデルのヤリスには一歩及ばない。

「ヴィッツ」の後継モデルとして2020年2月に発売された「ヤリス」(写真:トヨタ自動車)

ボディの寸法は似たようなものだが、わずかながらアクアが長くて、しかも背が低い。アクアのほうがクーペライクなスタイルなのだ。そこに個性の差がある。ただし、室内の広さは、それほどの差はない。また、車幅と最小回転半径は両モデルとも同じだ。

価格を比べると、アクアのほうが10~20万円ほど安い。さらにアクアには、特別仕様車が複数用意されている。社用ユーザーを狙った「S“ビジネス・パッケージ”」という価格を抑えたグレードも用意されている。さらに、ディーラーの商談では、古いモデルであるアクアは、それなりの値引きも期待できるだろう。

つまり、ヤリスとアクアを比べると、性能は確かにヤリスが上。しかし、他社ライバルにアクアが劣っているわけではない。アクアでも十分なのだ。それに、アクアにはヤリスよりも若干安いという魅力がある。つまり、言ってみれば、「型落ちだけど、性能面は必要十分。その分、安い」という家電のような感覚で選ばれる理由がある。

そうしたニーズがあるために、トヨタを訪れたお客がヤリス一本やりにならずに、一定数がアクアを購入する。それが、デビュー10年目でありながら月販5000台をキープする、アクアの実力なのではないだろうか。

次ページ比較検討できるユーザーメリット
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT