河野氏「ワクチン担当」起用に広がる疑問と不安 支持率急落で「ポスト菅」候補封じの思惑も

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河野氏は、菅内閣のナンバー2実力者の麻生太郎副総理兼財務相の率いる党内第2派閥「麻生派」に所属している。その一方で、首相候補人気ランキングで上位常連の小泉進次郎環境相とともに、「本当の後見人は菅首相」(無派閥菅グループ)ともみられている。

このため「今回の河野人事は、不仲と言われてきた菅首相と麻生氏が手を組んだ結果」(細田派幹部)との見方もある。「菅首相が早期退陣に追い込まれても、河野氏を後継首相にすることで、菅、麻生両氏がキングメーカーの地位を確保する狙い」(同)との読みからだ。

菅首相の支持率急落への致命的ミスとなったのが、GoToトラベル全国一旦停止を表明した2020年12月14日夜に「8人ステーキ会食」を行ったことだ。それが、派閥会長辞任で次期総裁レースから脱落したとみられた石破氏への期待につながった格好だが、その石破氏は首都圏の緊急事態再宣言発令直後の8日夜、出張先の福岡市の高級割烹で「9人フグ会食」を行っていたことを週刊文春に暴露された。

週刊文春報道は新たな石破つぶしか

石破氏は記事掲載前の文春記者の直撃質問に支離滅裂な説明をして、結局全面謝罪に追い込まれた。それ以来、菅首相のコロナ対応に対して、鋭い批判も影を潜めている。ただ、自民党内では「今回の文春砲には何か裏がある。ポスト菅に絡む新たな石破つぶしの謀略では」との憶測も広がる。

まさに、「自民党らしい闇試合の様相」(自民長老)でもあるが、そのこと自体が、菅政権に対する国民の不信感を拡大させている。

菅政権の命運を握る形となった河野氏が口にしたプロジェクトXは、正式題名は「プロジェクトX~挑戦者たち~」で、戦後高度成長期に不可能と思える難題に挑んで成功した先人達の苦闘を、独特のドキュメンタリーとして紹介して一時代を画した番組だ。

そして、多くの国民の心に染み込み、今も歌い継がれるのが同番組の主題歌「地上の星」だ。独特の歌唱法と印象深い歌詞で誰もが知る、シンガーソングライター・中島みゆきの代表曲で、出だしの「風の中のす~ばる~」を聴いて、自らの人生を苦悩を振り返った国民は数知れない。そして、物悲しい中島みゆきの歌声は、さびの「地上の星は今 何処にあるのだろう」で終わる。

菅首相が施政方針で訴えた、国民の安心と希望のための地上の星となるのがワクチン接種だ。河野氏は、カラオケ自慢の石破氏とは対照的に「破壊的な大声の音痴」(同僚議員)として知られる。河野氏が首尾よく「地上の星」を輝かせることができるかどうか。菅首相と河野氏の命運は接種の本格化が見込まれる桜の季節までに決まることになりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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