ソニーが台湾EMS大手に欧州のテレビ工場を売却、テレビ事業黒字化策の一環

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ソニーが台湾EMS大手に欧州のテレビ工場を売却、テレビ事業黒字化策の一環

ソニーは、電子機器製造請負サービス(EMS)の世界最大手、台湾・鴻海精密工業(通称フォクスコン)と、欧州の液晶テレビ事業における戦略提携を結んだ。

具体的には、ソニーはスロバキア・ニトラにあるテレビ工場を鴻海に売却し、鴻海はこの工場でソニーのテレビを受託生産する。ソニーにとってテレビ事業の黒字化は焦眉の急であり、自社工場売却で製造固定費の軽減を狙っている。

さらに、部品調達業務の一部移管についても鴻海と交渉しているもようだ。実現すれば変動費部分でも鴻海の調達規模メリットを享受することができ、中期的にテレビの価格競争力を向上できる。鴻海はこれまでもソニーと取引があり、他に米アップル、ヒューレット・パッカードなどの製品を受託生産している。年商は約6兆円(2008年度)。

ニトラ工場は、ソニーの完全子会社として07年8月に設立された。ソニーにとっては最も新しい液晶テレビ工場で、欧州の現地市場向けに製品を組み立て生産していた。同工場への総投資額は開示していない。

鴻海に対しては、同社株式の9割を9月に売却する。売却額は開示しない方針だが、現在の見込みでは若干の売却益が来2011年3月期決算に計上される見通し。また、現地従業員2500人も鴻海に引き継がれる。鴻海とは同様の提携を北米向けテレビでも締結しており、09年9月にメキシコ・ティファナ工場を売却している。
 
 ソニーは他にスペイン、愛知県稲沢など5拠点にも液晶テレビ工場を持つ。ソニーは来期のテレビ事業の通期黒字化に向け、生産拠点の見直しを聖域なく進める姿勢で、残る5工場についても売却が検討される可能性はある。

今回の工場売却による業績改善効果は、ソニーが従来から説明してきた構造改革案にある程度盛り込まれていると判断し、「東洋経済オンライン」は従来の業績予想を維持する。来期は2000億円台の営業黒字にV字回復する公算だ。
(杉本 りうこ)


《東洋経済・最新業績予想》
(百万円)    売 上  営業利益 経常利益  当期利益
◎本2009.03  7,729,993 -227,783 -174,955 -98,938
◎本2010.03予 7,300,000 -30,000 -40,000 -70,000
◎本2011.03予 8,000,000 220,000 210,000 150,000
◎中2009.09  3,261,063 -58,292 -49,970 -63,401
◎中2010.09予 3,600,000 74,000 69,000 49,000
-----------------------------------------------------------
         1株益¥ 1株配¥
◎本2009.03  -98.6 42.5特
◎本2010.03予 -69.8 25 
◎本2011.03予 149.5 25-30 
◎中2009.09  -63.2 12.5 
◎中2010.09予 48.8 12.5-15 
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