太陽電池事業は、今後数年で格付け評価上の比重が一段高まる可能性《スタンダード&プアーズの業界展望》
上席アナリスト 中井勝之
環境対策と化石燃料からの代替手段として、太陽電池を用いた太陽光発電の技術に世界的に注目が集まっている。この分野には、シャープや京セラ、パナソニック傘下の三洋電機、三菱電機などの日本の主要エレクトロニクスメーカーのほか、昭和シェルやホンダといったエレクトロニクス以外の業種からも参入が相次ぎ、事業基盤を強化している。
スタンダード&プアーズは、技術革新リスクや厳しい競争環境、政策変更リスクなどを考慮すると、現時点ではこの太陽電池事業のリスクは非常に高いとみている。ただ、各社の太陽電池事業はまだ規模が小さく、取り組みの差が各社の信用力に大きな影響を与えるほどではないものの、市場の成長に伴い、今後数年間で格付け評価上の比重が高まる可能性があると考える。
今後もグローバルに市場拡大が続く見通し
世界の太陽電池市場は、これまで急速な拡大を続けてきた。その後、金融危機などによる悪影響を受けたものの、米ソーラーバズ社によれば、2009年も前年比約6%の成長(出力換算ベースで6.43ギガワット)を維持した。
これまでの市場拡大は、各国政府が、補助金による助成や余剰電力の買い取り制度などの政策支援で後押したことが大きい。たとえば、スペインでは政府支援策が見直された結果、09年の同国の市場規模は前年比96%減少した。しかしながら、主要な先進国政府は、政策面での後押しを続ける見通しである一方、太陽電池の発電コストが着実に低下しているため、スタンダード&プアーズでは、世界の太陽電池市場は着実に拡大し続ける可能性が高いと考えている。米ソーラーバズ社は、10年以降は再び高成長に戻り、今後5年間で市場は少なくとも現在の規模の2.5倍以上に拡大する見通しと予測している。