北朝鮮の閲兵式はアメリカへのメッセージだ 新型ミサイル登場だが模型である可能性も

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韓国・北韓大学院大学の梁茂進(ヤン・ムジン)教授は「軍事力の強化を宣伝するのが今回の党大会の目的。北朝鮮の“われわれ式社会主義”や主体(チュチェ)革命偉業の達成をアピールし、体制固めに注力している」と説明する。慶南大学極東問題研究所の林乙出(イム・ウルチュル)教授は、「前回の閲兵式からわずか3カ月後に改めて閲兵式を行ったのは、党大会の重要性をアピールするためには閲兵式が最も効果的だと判断したのだろう」と見ている。

北朝鮮の国営朝鮮中央通信が1月15日に公開した閲兵式の写真からは、アメリカを射程距離に入れたICBM(大陸間弾道ミサイル)はなかった。ただ、新型と推定されるSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)「北極星5ㅅ(ㅅはハングルでs音)」は、2020年10月10日の閲兵式で見られた「北極星4ㅅ」よりも弾頭部分が長くなり、多弾頭搭載型か射程距離を延長した型である可能性が高いという指摘が出ている。

「核軍縮交渉」をアメリカに求めるメッセージ?

慶南大学極東問題研究所の金東葉(キム・ドンヨプ)教授は「北朝鮮が発表した新兵器開発計画は大部分が初期段階であり、開発・完成には相当な時間がかかり、また技術面で多くの問題を解決しなければならない。とはいえ、これを誇張やウソだと思われないように、ミサイル外部に北極星“5ㅅ”と記して公開したものと思われる」という。2020年10月の閲兵式で出てきた「北極星4ㅅ」と比べると大きな差はなく、実際に開発されたものではない模型である可能性が高いということだ。

北朝鮮は今回も「核保有国」「核武装力」といった表現を羅列した。朝鮮中央通信は「核保有国としてのわが国家の地位、世界最強の軍事力を保有したわが軍隊の威力を確証させた」と伝えた。

韓国・韓東大学の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は「ICBMは登場させなかったが、アメリカと韓国に脅威となる核兵器を誇示したことは、北朝鮮が事実上の核保有国であることを認めさせ、核軍縮交渉を行おうというメッセージだ」と指摘する。
(韓国「ソウル新聞」2021年1月15日)
 

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