「いい子」を演じ続けた結果、見失う生きる意味 自分を評価する誰かの感情を優先する癖に注意

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誰からも褒められる「いい子」を演じれば、一時的な承認を得ることはできますが、それは自分のリアルな心根の部分を承認されているわけではないため、すぐにまた「誰かに褒められる何か」をしていないと不安になってしまいます。このような、他人の感情を優先する生き方から抜け出すきっかけの1つになるのが、誰にも遠慮をしない、自分だけの「好き」を見つけて追求することです。

『NOを言える人になる 他人のルールに縛られず、自分のルールで生きる方法』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします )

ある知人は、これまでずっと「いい子」を演じすぎ、周りから信頼されてしまったため、面倒事をすべて引き受けざるをえなくなり、行き詰まっていました。家族の目を盗んでカウンセリングに通うほどに追い詰められていた状況を脱出するきっかけとなったのが、『スプラトゥーン』というゲームにハマったことでした。

また、なんとなく「生きたくないな」と感じながら生活していた別の知人は、あるときお気に入りのバンドを見つけ、そのライブに1人で行ったときに、なぜか涙を流すほど癒やされたそうです。

彼らが苦しみの末に見つけた「好き」は、おそらくほかの誰かのためではない、自分だけに向けられた感情だったのだろうと思います。その感情に浸れることは普段、誰かのための感情を優先している人にとってはとても尊く得がたい経験であり、自己の存在を肯定するきっかけとなる、根源的な癒やしにつながるものです。

「うそのない物語」が人生を支える

僕は、明確な答えのない今の時代において、人の心を動かすのは「弱き者の物語」だと思っています。さまざまな作品において、今「弱き者」が支持されてきており、そこに登場するキャラクターは、どこか弱く、格好悪く、人間臭い。そのうそのないリアリティーこそが愛おしさの源泉であり、完璧でないわれわれに「それでも生きていていいのだ」と安心を与えてくれます。

「いびつさ」は、その人の真骨頂であり、本質的な魅力そのものです。自分の弱さ、いびつさ、未熟で格好悪いところを認めて、それをも引き受けた「うそのない物語」は、ありのままの自分を「それでもいいよ」と肯定し、永きにわたって人生を支えてくれる「しなやかな強さ」をもたらすものになると思います。

誰しもが真に自分らしく生き、自分の物語を紡いでいくこと、それが今の時代に必要なことだと思うのです。

鈴木 裕介 内科医・心療内科医

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すずき ゆうすけ / Yusuke Suzuki

2008年高知大学卒。内科医として高知県内の病院に勤務後、一般社団法人高知医療再生機構にて医療広報や若手医療職のメンタルヘルス支援などに従事。2015年よりハイズに参画、コンサルタントとして経営視点から医療現場の環境改善に従事。2018年「セーブポイント(安心の拠点)」をコンセプトとした秋葉原saveクリニックを高知時代の仲間と共に開業、院長に就任。また、研修医時代の近親者の自死をきっかけとし、ライフワークとしてメンタルヘルスに取り組み、産業医活動や講演、SNSでの情報発信を積極的に行っている。

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