「いい子」を演じ続けた結果、見失う生きる意味

自分を評価する誰かの感情を優先する癖に注意

生きづらさを感じている人は、どうしたら自分の人生を生きている実感を得られるようになるのでしょうか?(写真:Pangaea/PIXTA) 
コロナ禍により「生きていく意味を見つけることの困難さ」を訴える人が増えているようです。生きづらいという苦しみをどう捉えればいいのか。医学部時代の近親者の自死をきっかけにライフワークとしてメンタルヘルスに取り組み、数多くの「生きづらさ」を抱えた人と接してきた秋葉原saveクリニック院長の鈴木裕介氏。
心が疲れた人に必要な思考法について、鈴木氏が書いた『NOを言える人になる 他人のルールに縛られず、自分のルールで生きる方法』より一部抜粋・再構成してお届けします。

コロナ禍は「人生の意味」を失わせつつある

僕は、都内で内科のクリニックをやっている医師です。10年ほど前、身近な人の自死をきっかけに、医療職のメンタルヘルス支援活動を始め、以後、さまざまな「生きづらさ」を抱える人たちの話を聞いてきました。

その多くは、病気などにより本来持っている「生きる力」が一時的に失われているケースです。ただ、それとは毛色の違う永続的に続くような深刻な生きづらさを抱えているケースも少なくありません。普段、普通に生活をしているように見えていても心の奥に深刻な生きづらさを抱えながら、それを隠してギリギリで生きている人が相当数いるのだろうと強く感じています。

例えば以前、次のような言葉を伝えてくれた、女性の患者さんがいました。

「先生、私は自分が生きる意味がわかりません」

「自分がこの世に生きてていいって、どうしても思えないんです」

彼女は、普通の人から見たら「恵まれた家庭」に生まれ、いわゆる「一流大学」を卒業した、誰もがうらやむような華やかな経歴の持ち主でした。聡明で知的で、仕事においても「尋常でないほどの」努力家で、職場からも取引先からも全方位的に評判のいい人物でした。しかし、そうした他者評価からは想像できないほど、自己肯定感を持てずにいたのです。

「自分に自信がほしくて、努力してきました。そのおかげで、行きたかった大学、行きたかった会社に行くことができました。でも、ホッとしたのはほんの一瞬だけ。今も、振り落とされないように必死でしがみついています」

「この先、幸せになれるイメージが、まったく湧かないんです」

泣きながら、絞ぼり出すようにそう伝えてくれた彼女は、「存在レベルでの生きづらさ」を抱えているように思えました。

彼女は、「自分の物語」を生きられていませんでした。自分ではない誰かのための人生を、誰かのための感情を、生きさせられているようで、その先の見えない苦しさにあえいでいるように感じました。彼女のように、自分を肯定できずに苦しんでいる若者に触れるたびに、僕はこの時代に幸せになることの難しさと、自分の物語を生きることの必要性を痛切に感じるのです。

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