「エコでサステナ」イタリアの新デパートの全貌 イタリアフード界巨人「Eataly」がプロデュース

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一見普通のデパートとまったく同じ印象だが、売られる商品や床、商品棚はすべてエコサステイナビリティーに配慮したものばかり(筆者撮影)

1階(日本でいう2階)はインテリアフロアで、イタリアンデザインの美しい家具やシステムキッチンも、すべてエコサステイナブルな製品ばかり。歩く振動が床材に伝わることでエネルギーを生み出す発電システムや、塗料自体が空気を浄化するものなどが実際にフロア内で使われ、紹介されている。

Made in Italyを代表する家具ブランドの「トノン」も出店(筆者撮影)

高級品ばかりでは庶民は環境問題対策に参加できませんね、と質問すると、Green Pea CEOのフランチェスコ・ファリネッティ氏は「ここで扱うシステムキッチンは家電(冷蔵庫、オーブンなど)込みで3000ユーロ(約38万円)から、上は天井知らずの高級品まで選択の幅は広い」と答えた。

その価格設定が万民向けかどうかは別としても、これからの時代で生きていくうえのヒントや参考になって、とても興味深い。

コロナ後の新しい世界に向けた消費スタイルを提案

2階はファッションフロア。もともと環境問題に積極的な「パタゴニア」「ティンバーランド」のほかに、イタリア最高級カシミアブランドの「ドルモア」、トリノ生まれの「ボルボネーゼ」など高級ブランドも並ぶ。みんな何かしらが「エコ」で「サステイナブル」な商品作りをしている企業ばかりだ。海洋プラスチックを集めて洋服、バッグ、靴に作り替えるスペインのブランド「エコアルフ」もある。

「ビューティー」をテーマにうたう3階は「ブルネロ・クチネリ」「エルメネジルド・ゼニア」「ヘルノ」といったイタリアが誇る高級ブティックが一角に並ぶ一方で、自分の肌に合った化粧品を作ってくれるコーナーや、環境問題、自然がテーマのブックショップ、レストラン、バールという構成だ。

全館内で使用されるエネルギーは当然、最新型の地熱発電や太陽光電力、地下から吸い上げる水力などを利用し、極力環境に負荷をかけない最先端のシステムを導入している。ここへきて買い物をするかどうかは別としても、環境問題への意識を高め、エコサステイナビリティーについての新しい情報を得る。コロナ後の新しい世界に向けた消費スタイルについて考えるには、最適な場所の1つであることは間違いない。

1月11日にはスペインのマドリッドがノルウェーのように氷で覆われている、というニュースが流れた。雪が降るのはとてもまれなため除雪設備が脆弱で、車は全面ストップし復旧に2週間かかるという。

一方で地中海を挟んだ反対側のギリシャは30度を超える暑さで、コロナ下にもかかわらず海水浴をして涼を取る人たちの映像も。明らかに異常気象だ。手遅れになる前に、すべての人類が今一度、環境問題について考えてみるべきときなのではないだろうか。

宮本 さやか フードライター

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みやもと さやか / Sayaka Miyamoto

1996年より、イタリア・トリノ在住。イタリア人の夫と娘と暮らしつつ、ライター、コーディネーターとして日本にイタリアの食情報を発信する。一方、イタリア料理教室、日本料理教室、そしてイタリアの人々に正しい日本の食文化を知ってもらうためのフードイベントなども行っている。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」

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