「エコでサステナ」イタリアの新デパートの全貌 イタリアフード界巨人「Eataly」がプロデュース

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Green Peaがオープン前の記者会見で挙げた、深刻な環境問題の例のいくつかを以下に記す。

(1)世界で起きた自然大災害:1999年には19件、2019年には1515件
(2)現在、海洋プラスティックの量は1億6500万トン、2050年には海の魚1トンにつき3トン
(3)過去5年間で、世界中の海面が毎年平均4ミリ上昇している
(4)20世紀の100年の間に、過去2000万年に比べて大気中の二酸化酸素濃度が45%増加した

そして世界の科学者の90%が、地球温暖化はエマージェンシー(緊急)事項と認めていると強調している。

「バイオリンの森」の倒木を再利用

総面積1万5000平方メートル、5階建てのGreen Peaの建物は、無機質な鉄骨の上から木材が張り巡らされたデザイン。その木材はイタリア北東部の森から運んできたものだそうだ。

建設中のGreen Pea外観。フィアットの元工場リンゴットやイータリーに隣接し、ひときわ目を引く大きさとデザインだ(筆者撮影)

そのベッルーノの森は別名「バイオリンの森」などとも呼ばれ、ストラディバリウスを始めとする世界最高峰のバイオリン製作に最適なアカモミが伐採されることで知られていた。

だが2018年10月に起こった巨大嵐で4万1491ヘクタールにも及ぶ森林の木々が倒れ、地元経済に大損害を与えた。なかには樹齢200年にもなる名木もあったという。その倒木をトリノへ運び、建物の外観に利用した。環境に負荷をかけない、資源を再利用する、耐久性がある。グリーンビジネスを語るうえでのキーワードをすべて体現した建築プロジェクトとなった。

一方、建物内のフローリング材も、ピエモンテ州の過疎の村などから、打ち捨てられた建物の木材を再利用した。新品の木材よりも深みがあり、高級感のあるフローリングに仕上がっている。

イータリー創業者のオスカー・ファリネッティ氏。2020年12月4日Green、Green Peaのミュージアム・スペースにて(筆者撮影)

館内に入ると、まずエントランス付近に「ミュージアム」と称するスペースがあり、いくつものモニターに世界のさまざまな環境問題を語るビデオが流されている。ターゲットは主に子どもと若い世代。将来の地球の行方を担う人たちに、現在人類が抱える問題を深く認識してもらうのと同時に、将来の顧客教育も兼ねる一挙両得的な戦略だ。

そしてFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)が最新型電気自動車を展示販売し、テレコム・イタリアは再生品のスマートフォンを販売する。自宅のエネルギー消費をよりクリーンで環境負荷の低いタイプに変更するためのコンサルカウンターや、石油溶剤を使わないクリーニング店もある。

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