スペインでついに始まった「ホテル売却」の嵐 世界第2位の観光大国で起きている深刻な事態
ただし休業はしていても一定の固定費は毎月発生する。その一方で期待されていた政府からの支援金の給付はない。こうした事態が長引くにつれ、多くのホテルで資金繰り問題が深刻になっていったわけだ。
営業を継続しているホテルでも現在の客室稼働率は地域によっても異なるが30〜40%の枠を超えることがない状態にあるという。販売可能な客室1室当たりの売り上げ(RevPAR)も従来比65%まで下落。営業すればするほど赤字が膨らむ状態となっている。
しかも、新型コロナの感染拡大がある程度抑えられ、観光業が回復するのは2022年とも2023年とも言われている。さすがにこの状況をあと1、2年続けるのは難しい、と多くのホテルが売却を考えるようになったようだ。
アンダルシア州では114軒が売りに
前述の『ホテルトゥル』は、売却を希望しているホテルの軒数を自治州ごとにリストアップしている。それによると、アンダルシア114軒、カタルーニャ101軒、カスティーリャ・イ・レオン67軒、バレアレス59軒、バレンシア43軒、ガリシア32軒、カナリア26軒、マドリード19軒などとなっている。
スペイン南部に位置し、日本人にも人気が高いアンダルシア州でも売却希望が最も多いのがマラガ県の39軒に上る。同県にはマルベーリャ、トレモリノス、ベナルマデナなど高級リゾート地があり、そこには多くのホテルが林立している。
次がグラナダ県の32軒。グラナダの4星ホテル「ホテル・アバー・デ・グラナダ(Hotel Abba de Granada)」の場合は、数カ月前にファンド会社が900万ユーロ(10億8000万円)で買収した。同ホテルはバスクの建設業者がホテル事業に乗り出したチェーンホテルであるが、グループの資金流動性を高めるため同ホテルを売却したと伝えられている。
カタルーニャ州ではバルセロナ県で49軒が売却リストに挙がっている。日刊紙『エル・パイス』(2020年12月7日付)によると、バルセロナのサンス駅近くのホテル「アクタ・シティ-(Acta City)」もこの1つ。1992年建設の4星ホテル(88部屋)で、売却希望価格は2650万ユーロ(31億8000万円)。
同ホテルは国際会議や国際展示会の参加者が多く利用することで知られているが、昨年は2月に11万人の訪問が予定されていたモバイル・ワールド・コングレスが中止となったのを皮切りに、予定されていた展示会は軒並み中止に。国際会議も同様の状況で経営が立ち行かなくなったようだ。
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