湘南新宿ラインはなぜ「貨物線」を走るのか 旅客列車が通る東京都心の貨物線は意外に多い
では、かつて都内にも数多くが存在した貨物駅はどうなったか。巣鴨駅など保線用車両のための留置線として面影を残している場所もあるが、多くは再開発の舞台になり、レールもホームも消えている。
品川の敷地は品川インターシティとして再開発されており、新宿の貨物駅があった場所は高島屋などが入るタイムズスクエアになった。南側がつぼまった独特のビル形状から、その昔貨物駅があったと想像できる。池袋貨物駅は、それまで2面4線だった旅客ホームを4面8線に増設するために使われた。
恵比寿駅は近くにあったサッポロビール工場からのビール輸送の拠点として作られた。現在工場跡地には恵比寿ガーデンプレイスがある。上野駅から貨物業務を分離すべく生まれた秋葉原駅の跡地は、地下につくばエクスプレスが乗り入れている。
山手線内では中央本線(当時は甲武鉄道)の始発駅として開業した飯田町駅が、その後旅客ターミナルを新宿駅に一元化するという方針により貨物専用駅になり、1999年まで営業を続けた。跡地はJR貨物が再開発を行い、ダイワハウス工業東京本社、JR東日本グループが運営するホテルメトロポリタンエドモントの新館などがある。
貨物線はこれからどうなる?
その結果現在、東京23区内に残る現役のJR貨物駅は、隅田川駅と越中島貨物駅、東京貨物ターミナル駅の3つのみだ。しかし、今後も貨物線を走る旅客列車が増え続けるとは限らない。むしろ逆の現象が起こるのではないかと考えている。
1つは新型コロナウイルスの影響でテレワークが進み、ただでさえ移動総量が減ったことに加え、東京都からの転出人口が転入人口を上回るという、少し前までの東京への一極集中が嘘のような状況になっていること。彼らの一部は湘南新宿ラインや相鉄線沿線の郊外に住むかもしれないが、週に1度程度の上京なら、長野県や栃木県の新幹線沿線への移住を考える人もいるだろう。
もう1つは政府が、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにすると発表したことだ。現在の日本のCO2排出量は約2割が輸送機器関連である。コロナ禍で移動は減ったが物流はむしろ増えており、現在のようなトラック主体の輸送では、電動化を積極的に進めても、目標達成は難しい。鉄道などへのモーダルシフトが肝になる。
現在、山手貨物線を走る貨物列車は1日に定期3本、臨時3本にすぎないが、今後は増加に転じていくかもしれない。
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