企業送迎バスを生活の足に「自動車の街」の実験 静岡県湖西市、シャトルバスに市民が「相乗り」
各企業が走らせている既存のシャトルバスに市民を乗せる場合、課題となるのがルートの設定だ。馬渕氏によると、前提条件として次の4パターンをまず想定し、これを基に企業側と調整したという。
1:企業側の既存ルートやダイヤに沿って、バス停を追加する
2:企業側の既存ルートにう回区間を加え、市民の利用の多いスポットを立ち寄るようにする
3:出発点と行き先、出発時間は定めるものの、途中で利用者の自宅などに立ち寄る
4:デマンド型で利用者の要望に応える
今回の実証実験には地元の4つの企業が参加したが、ルートの選定にあたっては、上記1と2のいずれかに準拠する方法が取り入れられた。
地元住民から見れば、「生活の足」の利便性の向上が期待できる今回の実証実験。一方で、もともとシャトルバスを利用している工場の従業員から見れば、今までは駅から事業所に直行していたのが、地元のお年寄りらの利用を促す結果、若干のう回(遠回り)や乗車時間の増加という弊害が生まれることになる。馬渕氏は「こうした問題への合意形成を取りまとめるのも今後の課題」と述べている。
免許返納後も暮らしやすい街に
湖西市は前述したように、自動車産業の集積地でもある。そんな背景もあり、今回のプロジェクト発足に際しては、これまでのように自治体と各企業がバラバラに走らせているバスのサービスを統合したうえで、将来は自動走行技術を活用して新たなモビリティサービスの実現を目指す指針も掲げられている。運転手不足の課題を解決し、高頻度運行を実現すれば市民にとってより利便性の高いサービスが得られるだろう。
湖西市の影山剛士市長は「(実験の)段階を重ね、運転免許を返納しても、病院や買い物に行きやすい、そんなまちづくりを目指す」とプロジェクトの意義を強調する。「70代でも人口の6割がクルマに乗っている」(馬渕氏)という状況にあって、きめ細かい生活の足の確保は待ったなしの課題だろう。同様の問題を抱える全国各地の自治体にとって、企業シャトルバスを活用した今回の取り組みが参考になる部分は大きいのではないだろうか。
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