企業送迎バスを生活の足に「自動車の街」の実験 静岡県湖西市、シャトルバスに市民が「相乗り」

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コーちゃんバスの運行ルートは7つあるが、運行経費のほとんどを湖西市が負担しているのが現状だ。年間7000万円にも及ぶコスト捻出は頭の痛い問題で、これをいかに圧縮するかが大きな課題となっている。残念なことに利用者の意見は厳しい。「バス停が少ない」「本数が少ない」「あちこちにう回するので時間がかかる」などの理由で満足度は低いのだという。

「コーちゃんバス」は市がジャンボタクシーをチャーターし運行している(筆者撮影)

一方で、市内には多くの従業員を抱える工場がいくつもあり、それぞれの企業が自主的にシャトルバスを走らせている。時間帯によっては空車で走っていることもあり、こうしたバスを市民向けに有効利用できないか、という構想が浮上。アイデアを関係者間で共有し、プロジェクトを実行に移すため、2020年1月に関係各社からなる研究会が発足した。

湖西市が打ち出した計画は、企業シャトルバスに市民が乗車可能とする仕組み作りをしながらコーちゃんバスとの連携を図り「共働運行サービス」の実現を目指すというものだ。実現すれば、企業シャトルバスを公共交通として活用することで市民にとって移動の利便性が高まる一方、コーちゃんバスに工場従業員を誘導することで企業側も運行本数の削減が図れる。さらには、慢性的な運転手不足の対策にもなりうる。

「自家用有償旅客運送」とは

筆者が試乗する際、まず気になったのは「白ナンバーのバスにお金を払って乗るのはどういう位置づけになっているのか」という点だった。

日本では、営業用車両はいわゆる「緑ナンバー」が付けられる一方、それ以外の自家用車両には「白ナンバー」が付けられる。今回の実証実験で使われる企業シャトルバスは、あくまで自社の従業員を乗せる目的の車両なので、営業用のバスとは違い「白ナンバー」を付けている。

国土交通省は、自家用車両を使用して利用者から料金を取って(有償で)運行することを認める「自家用有償旅客運送」という制度を設けている。定義としては「地域における輸送手段の確保が必要な場合に、必要な安全上の措置をとった上で、市町村やNPO法人等が、自家用車を用いて提供する運送サービス」となっている。事例としては、自家用車で介護用の送迎を行っているケースなどが見られる。

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