日本に「GAFA」級の企業が生まれない根本原因 「よそ者」の力がベンチャー立国には不可欠だ

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このような問題意識でBooSTARXを発足させ、早速第1回目のオンライン説明会を開いたところ、100名を超える申し込み者が殺到した。その内、約20名の参加者が事業計画書をBooSTARXに提出し、その概略を見ると最も起業希望者が多かったのは越境ECの分野で、時代の変化を反映していることがわかる。

コロナ禍で日中間のヒトの移動がほぼ断絶する中、壊滅的なダメージを受けている日本の地方の特産や名産品を留学生が中国のネットで紹介したら大ヒットするという事例が増えているのだ。

地方創生は長らく叫ばれ続けているが、情報、人材、とりわけ海外市場に詳しい人材が不足しているため、海外への越境ECはなかなか功を奏していない。

一方、中国のZ世代は中国人のニーズを熟知した独自の目利きからWebサイトのデザイン、インフルエンサーを活用した販促まで、IT技術を駆使し地方の中小事業者を支援できる。

海外の革新的テクノロジーを日本に

日本のいいモノやサービスを海外に発信するだけではない。海外の革新的なテクノロジーを日本の産業に導入し、日本人の生活の質的な向上に寄与するスタートアップも少なくない。

例えば、スマホとQRコード技術を使った飲食店向けメニューシステムの開発やIoT技術を活用した次世代型宅配ボックスの提供などがその一例だ。

こういったスタートアップ企業の中から将来的に大きく飛躍できる可能性の高い企業に投資し、当事者としてその企業の成長を手伝ったり伴走したりして、上場というゴールを目指すことがBooSTARXの目的だ。

冒頭で述べたとおり、スタートアップやベンチャー企業を興すのは、ドラマで描いているようなきれいごとではない。数年後、生き残れる企業もごくわずかだ。しかし、BooSTARXの立ち上げを通じて、こうしたリスクを過度に警戒する日本の若者たちの冒険心とハングリー精神を少しでも喚起できればと期待している。

在日外国人の成功事例が増えれば、ベンチャーの創業を目指す日本人にとってもいい刺激になるし、海外からも優秀な人材を呼び込む効果も期待できる。このようないい循環を作り出すことがわれわれの最終目標だ。

日本で盛り上がりつつある起業ブームをより持続的なものにするため、将来のユニコーン企業を見つけていきたい。

肖 敏捷 エコノミスト、AIS CAPITAL株式会社 代表パートナー

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しょう びんしょう / Xiao minjie

1964年、中国西安市生まれ。武漢大学卒。1994年に筑波大学博士課程単位取得退学後、大和総研、SMBC日興証券で、エコノミストとして中国経済や金融資本市場に関する調査研究に従事。2018年11月から現職。主な著書に『人気中国人エコノミストによる中国経済事情』(日本経済新聞出版社=2010年)、『中国 新たな経済大革命』(同=2017年)など。テレビ東京の「モーニングサテライト」のコメンテーターとしても知られる。

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