日本に「GAFA」級の企業が生まれない根本原因 「よそ者」の力がベンチャー立国には不可欠だ
一方、筆者世代の来日中国人にとっては、一生懸命頑張って日本の大学あるいは大学院を卒業したら、日本の会社、できれば銀行や商社のようなすごい会社に入るのが夢だった。
よく言えば、日本社会に適応した優等生だが、悪く言えば、日本のサラリーマンと同質化し、日本のいいところと悪いところを再発見する力が弱まってくる。
だから、少なくとも、筆者の周辺には起業する知人があまりいなかった。周りを見ても、日中間の貿易、あるいは飲食、語学教育、観光などのサービス業で創業する者がほとんどだった。
これらも立派な事業であることに違いないが、イノベーションの観点からみれば、やはり、従来の枠組みを変えるほどのインパクトはないといえる。
しかし、若い世代の留学生たちは違う。日本のいいところと悪いところを直感でキャッチし、ビジネスのチャンスに繋げていく。ぬるま湯にずっとつかってきた者は変化を求めない。だとすると、新世代の在日外国人という「よそ者」は現状を変える一つの貴重な存在かもしれない。
よそ者たちを支援する「外国人起業倶楽部」
このような時代の変化に対応する一つの試みとして、2020年12月、筆者が所属する組織は在日外国人による起業を支援するため、「在日外国人起業倶楽部」(BooSTARX)を立ち上げた。
ベンチャー投資の観点から、有望と判断する企業に投資したり、その企業の成長を手伝ったりすることで、事業の成功に向けて一緒に汗をかいて努力を重ねたいと思っている。
BooSTARXを立ち上げる狙いは、「よそ者」の力を活用し、日本の若者たちのやる気を刺激することだ。例えば、Z世代の中国人が創業した企業の中には、日本人が気付かなかった問題点あるいはニーズを発掘し、独自の技術と製品で日本に根を下ろす企業も増えている。
ITを駆使する創業者にとって日本は天国だ。キャッシュレス社会が当たり前のZ世代が日本に来ると、おそらくタイムスリップを感じるだろう。
東京のようなグローバル都市ではよい技術とよいアイディアさえあれば、それは言語の壁を越えてビジネスを展開できる。ある在日中国人起業家は「東京の山手線ほど便利な商圏がない」と語ったのは目から鱗だった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら