韓国経済「2021年プラス3.0%」成長は可能か 好調な半導体産業が主導、カギは消費

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――2020年12月初旬に、韓国の文在寅大統領がTPP(環太平洋経済連携協定)への参加に意欲を示しました。

TPPはレベルの高い自由貿易協定ですが、韓国側も関税の大幅な引き下げを余儀なくされます。参加するならかなり身を切る決断になります。アメリカの政権交代でTPPへの参加可能性が出ているので、それをにらんで文大統領は言及したのかもしれませんが、実際の加盟交渉では国内の反発を覚悟した、かなりの決断が必要とされるでしょう。

――文大統領の任期は2022年5月と残り1年半ほどになりました。経済改善を公約に掲げて当選した文大統領は成果を上げているでしょうか。

公約は実行したのですが、その成果が出ていないのが現実です。特に、公約の目玉として掲げていた「最低賃金の引き上げ」と「週52時間勤務制」は実行したものの、当初狙っていた成果が出ていません。

公約は実行したがあまりにも大きかった副作用

最低賃金の引き上げについては、2020年までに時給1万ウォン(約900円)を目標にして、当初は大幅な引き上げを行いました。ところが中小企業を中心に負担が大きいとの反発が出て、引き上げてはいるものの、目標達成は断念されました。所得を増やせば消費へと向かい、企業業績も改善するというシナリオを文政権は描いていましたが、経済界からの反発があまりにも強かったのが現実です。

――週52時間勤務制は雇用、とくに相対的に失業者が多い若年層に向けたものでもあったのでしょうか。

この制度の導入は、1つはワークシェアリングを広めるため、もう1つはOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で2番目に長い労働時間を改善し生活の質を高めようというのが狙いでした。52時間というのは法定労働時間を含めた労働時間です。これを2018年7月に実施しましたが、実際は残業代を含めた生活費を想定する労働者にとっては実質的に所得減となりました。それまでは週28時間の超過勤務残業が認められていましたが、これが12時間に制限され、残業を当てにしていた労働者には大きな所得減になったようです。

失業率も2020年7~9月期で3.6%と世界で見ると低いほうですが、若年層(15~29歳)の失業率は8.7%と高水準のまま。結局、文政権は公約通りに実施したものの、それがもたらした副作用が大きすぎて当初狙った成果が上がっていないと言えるでしょう。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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