JR東と西武が包括連携、いったい何をやるのか 「新幹線とプリンスホテル」で展開、他分野は?

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まずは軽井沢をモデルケースとしてスタートし、「今後は両社の結節点である苗場や雫石などにも広げていきたい」(後藤社長)方針だ。具体的な目標はまだないというが、後藤社長は「プリンスホテルはこれまでワーケーションに取り組み、延べ1万人くらいの利用があった。今回の連携でもそれなりの数字にはチャレンジしていきたい」と力を込める。

ワーケーションのほか、シェアオフィスの展開でも協力する。JR東日本が駅ナカなどで展開する「STATION WORK」(ステーションワーク)会員向けに、プリンスホテルを利用できるプランを設定。西武線沿線でJRの個室形シェアオフィス「STATION BOOTH」(ステーションブース)の展開も検討する。

このほか、まちづくりの分野では軽井沢や品川などでMaaS(マース、次世代移動サービス)を活用した移動手段の展開や、両社の路線が乗り入れる駅、事業エリアが近接する拠点での開発連携などを検討。沿線活性化ではイベントの共催や、ベンチャー企業との協業などを推進する「JR東日本スタートアップ」と、西武HDで新規事業の創出に取り組む「西武ラボ」の連携強化などを進める。

ワーケーション以外の具体的展開は

両社が連携に至った理由についてJR東日本の深澤社長は、「ワーケーションの推進に向けて自分たちのエリアを前提に取り組みをしてきたが、これをもっと広げなければ魅力ある内容は提供できない。それぞれに得意分野がある西武と話を進めた」といい、ワーケーションの浸透に向けた意気込みがうかがえる。

コロナ禍による行動変容は、両社の経営に大きな影を落としている。2020年度第2四半期決算ではJR東日本が2952億円、西武HDが306億円の営業赤字だった。鉄道が主力のJRは運輸事業、西武HDはホテル・レジャー事業の落ち込みが大きい。その点で「JRで移動し、西武HDのホテルに泊まる」ワーケーションに対する期待感はあるだろう。

一方、既存事業の統合などさらに踏み込んだ連携については、「今回は新しい生活スタイルという切り口から入っていこうと思っている。鉄道を含めて似た事業をやっているので、連携できるところはいろいろお話をさせていただきたい」(深澤社長)、「両社の協議を続ける中でいろいろな付加価値が高まってくると期待している」(後藤社長)といい、今後の検討課題のようだ。

会見で後藤社長は「これだけの包括的な連携を発表したわけで、これからしっかり大きく育てていきたい」と述べた。「包括連携」の効果を発揮するには、幅広い分野でどれだけ具体的な内容を展開できるかがカギとなるだろう。コロナ禍で鉄道各社が苦境にあえぐ中、今回の発表はグループの垣根を越えた連携の試金石となるだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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