韓国・文大統領が仕掛けた検察改革の危険性 国家情報院の権限も制約、その政治的意図とは

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文大統領に言わせると、国民に選ばれた自分たちが検察の権力を弱め、統制するのであるから、国民の望む正義が実現できるというであろうが、これはあまりにも自己中心的すぎる。このままでは公捜処が進歩勢力にとっての「権力の侍女」になりかねない。

さらに仮に政権交代して保守勢力が権力を握ったときには、公捜処が進歩勢力を弾圧するための道具になってしまう可能性さえ秘めている。

国情院の改革についても疑問がある。

独裁時代と変わらぬ政治手法

改革によって北朝鮮に対する韓国の情報収集力などが格段に落ちる可能性が指摘されている。北朝鮮は核兵器やミサイルの開発を継続しており、韓国だけでなく、日本やアメリカなどの関係国にとって軍事的脅威である。この現実を文政権はどう認識しているのであろうか。

南北関係改善を重視することは選択肢の1つであるだろう。だからといって厳しい安保環境を脇においてしまうことは、韓国のみならず日本を含む北東アジア、さらには世界にとっても危険なことである。

文大統領の権力機関改革がこのようにさまざまな矛盾や問題を抱えている最大の原因は、改革の目的が純粋に政策的なものではなく、保守勢力を否定し、弱体化するという極めて政治的なものであることにある。こうした政治的目的を達成するために、国家にとって極めて重要な司法制度や安全保障政策を動員してしまった。その手法は進歩勢力が批判する独裁体制時代の政権と変わるところがない。

その結果、司法制度の政治的中立性がゆがみ、国民の信頼がゆらぐ。また、安全保障政策上のリスクが高まる可能性がある。さらには保守と進歩の対立が一層激化し、社会の分断が深刻化するであろう。

薬師寺 克行 東洋大学教授

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やくしじ かつゆき / Katsuyuki Yakushiji

1979年東京大学卒、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸や外務省などを担当。論説委員、月刊『論座』編集長、政治部長などを務める。2011年より東洋大学社会学部教授。国際問題研究所客員研究員。専門は現代日本政治、日本外交。主な著書に『現代日本政治史』(有斐閣、2014年)、『激論! ナショナリズムと外交』(講談社、2014年)、『証言 民主党政権』(講談社、2012年)など。

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