ついにデビュー、横須賀・総武快速「E235」の全貌 単なる「山手線の色違い」ではない進化版車両

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山手線では駅ホームドアの設置が進んでおり、帯状のラインはホームドアに隠れて見えづらくなるため、縦のデザインにして視認性を高める狙いがあった。横須賀・総武快速線はホームドアの設置状況が山手線ほどでないため、E217系の帯状デザインが踏襲された。なお、「これらのデザインはメーカーにお願いした」(JR東日本)としており、奥山氏が横須賀・総武快速線向けに新たにデザインしたものではないという。

また、山手線のE235系では、列車が発車すると、最後尾車両の行き先案内板に四季折々の花の図柄が表示されるという「遊び心」があった。横須賀・総武快速線でも「山手線と考え方は同じ。運用時期に合わせていろいろな趣向を考えている」としている。

山手線になく横須賀・総武快速線にはあるという点では、グリーン車がまさに当てはまる。グリーン車は無料公衆無線LANサービスの提供や各座席へのコンセント設置など、車内設備の充実を図っている。

異常時にはバッテリーで自走

利用者の目に触れにくいテクノロジーの部分では、山手線向け車両からの大きな進化がいくつも見られる。最大の特徴は、停電などの異常時に駅間に停車した際、最寄り駅または乗客が避難しやすい場所まで走行可能な非常走行用電源装置を搭載したことだ。「バッテリーから供給された電力で約10kmの自走が可能」(JR東日本)。新幹線ではJR東海が最新型のN700Sにこの機能を搭載しているが、JRの在来線車両では「今回が初めて」(同)という。

車両の床下にはさまざまな機器が搭載されており、非常走行用電源装置を新たに設置するスペースがない。開発スタッフが知恵を絞り、ブレーキシリンダーへ送る圧縮空気をためるタンクを屋根上に搭載することにした。利用者には気づきにくいが、これも外観上の特徴だ。

また、山手線向け車両にはない分割・併合機能が備わった。なお、E217系とE235系の併結は車両機器を管理するシステムが異なるため行われない。

横須賀・総武快速線へのE235系の配備は4年かけて行われる。その後にほかの路線への配備が始まるかもしれない。しかし、今から4年後といえば、E235系のデビューから10年近い年月が経っている。IT技術は、犬の1年が人間の7年に相当することを意味する「ドッグイヤー」と言われるほど進化が速い。今から4年後に始まる次の路線に配備される車両は、現在のE235系の性能をはるかにしのぐものになっているかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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