出前館「圧倒的な急成長」の知られざる舞台裏 創業20年で2万弱の加盟店が今年だけで2.5倍に
狩野 史長(以下、狩野):フードデリバリー業界では、イートインの席を持たず、料理をつくるキッチンのみを備えた「クラウドキッチン」と呼ばれるデリバリー専門店が増えつつあるようですが、その中でも出前館は、複数の飲食店業態を1カ所にまとめて入居してもらい、キッチンを共有して調理するタイプのデリバリー専門店を展開しているそうですね。
藤井:例えば、から揚げ、焼き肉、カレーのデリバリーを1カ所のキッチンで同時に営むようなことが可能です。ネット注文する際にお客さんからは、これらの3つは別々の店に見えても、実際にキッチンは1つしかないのです。
エリアごとの料理カテゴリーの偏りを補完
狩野:このビジネスを始めた背景は?
藤井:メニューを増やして出前を当たり前にすることが狙いです。出前館のサービスでは、そのエリアごとで料理のカテゴリーに偏りがあります。例えば「このエリアには中華料理のお店が多いけど韓国料理が足りない」というようなことです。
そこで、われわれがそのエリアに弱いメニューをクラウドキッチンで補完することで、より快適に出前館を使っていただける仕組みを目指しています。
三神:これに入居する飲食店には、どのようなサポートをしていますか。
藤井:月額18万円、半年の契約期間で3つの会社に飲食店として入っていただきます。入居中はわれわれの会社の注文サイトに掲載し、デリバリーも代行します。また、年代別の売れ筋商品の情報を共有し、配達に適した容器の提案など、きめ細かく事業をサポートしています。
三神:レストランの独立開業を希望する人は多いですが、料理や店舗の運営、資金の調達などが難しいため、未経験者が始めるのは大変困難です。対して出前館の仕組みだと、衛生面や消防法の対応などの管理を任せられることで、料理に集中してデリバリーで稼げるモデルになっていますね。これは未経験者でも登録可能ですか?
藤井:はい。今後このモデルを拡大させていくことで、配送拠点とクラウドキッチンが一体化され、デリバリーから事業をスタートしていくというように、オンラインからオフラインに攻めていくことができる時代が来ると考えています。
三神:起業や創業をするために活動する入居者を支援する“インキュベーションセンター”の飲食版ですね。
藤井:そうですね。
三神:もともとキッチンカーで営業していた人が、テイクアウト専門の店舗を持つ流れは今までもありましたが、もっと軽量化して、キッチンカーよりもさらに金銭面も実務面も負担が軽いテイクアウト専門店から始めて、将来はイートインもあるレストラン経営に乗り出すというようなステップアップもできますね。