鳴り物入り「デジタル庁」の議論が残念な理由 期待される役割は「ハンコ撲滅」じゃない
現在、JR東海が日本車輛を子会社化し、NTTはNECと資本提携している。これは、こうした考えがベースにある。
ただし、このような資本提携には膨大な資本が必要で、現状は十分にスクラムを組めているとは言いがたい。鉄道の場合オペレーターが国交省、メーカーが経産省となるし、通信の場合はオペレーターが総務省、メーカーが経産省の管轄となっている。これらの官庁間での政策の連携が必要だ。
日立や三菱、東芝のような日本のインフラメーカーは、欧米のライバルに規模という点で負けている。その一方で日本のオペレーターのサービス品質は世界屈指といっても過言でない。JRの定時性やNTTの通信品質は極めて高い一方で、世界のオペレーター、とくに小規模な国のオペレーターは高速鉄道や5Gを制御する技術的な洗練を持ち合わせていない。
中国と日本の違い
IoTの時代を迎え、従来オペレーターが持っていた業務ノウハウをデータやソフトウェアの形でコンピューター上に巻き取ることが可能となった。輸出による利益の上げ方としてはサービスを提供するよりも、モノの輸出のほうがわかりやすく、利益を上げやすい。オペレーターの持つ業務ノウハウを日本のインフラ輸出に結び付けることが望ましい。
さらに、オペレーターだけ、あるいはメーカーだけではお互いに現在の業界標準のアーキテクチャーや通信手順に縛られるため、革新的な深いイノベーションを起こしにくい。
かつてNTTドコモが世界に先駆けたデジタル通信サービスであるi-modeの導入が可能だったのは、NTTが持つ、いわゆる電電ファミリーへの影響力があったからだ。しかし、これも現在では相当程度崩壊してきているように見える。NTTは、AT&Tがベル研究所を分離した後、研究開発能力を持つ世界唯一のキャリアだ。このユニークさがいまのままでは生かされない。
中国を見ると、国内でのチャイナモバイルによる5Gネットワークの世界に先駆けた展開とそこでのファーウェイの経験が、ファーウェイによる国外への5Gネットワーク輸出の優位につながっていたり、新華社による低価格でのニュース販売が、やはりファーウェイによるアフリカでの放送設備や通信設備更新ビジネスの獲得の先兵として機能しているように見える。
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