アップル「初ヘッドホン発売」が意味する戦略 iPhoneのカメラに続き「演算能力」で問題解決
新しいMacを発表し、今年はこれで店じまいと思われていたアップルがオーバーヘッド型ヘッドホン「AirPods Max」を12月8日、発表した。アップルがヘッドホンを発売するという噂は今年の初め頃からあったが、北米の年末商戦が落ち着くブラックフライデー以降の新製品投入は異例だ。
しかし製品の内容を見る限り、アップルは新製品効果による一時的な売り上げを狙っているのではなく、腰を落ち着け、数年というタイムフレームでオーディオ製品市場を席巻することを狙っているようだ。
アナログ製品に「コンピューティング」で挑戦
6万1800円(税別)という価格設定のAirPods Maxは、あらゆる消費者に向けた製品とはいえないかもしれない。
ワイヤレス方式のヘッドホンは高級機でも4万円を切る。実売では3万円台前半であり、同ジャンルの中では突出して高価な設定だ。
AirPods、AirPods Proは市場を席巻しているが、それぞれ1万7800円、2万7800円と比較的購入しやすい製品だった。販売数や市場占有率といった数字で、AirPods Maxがいきなり市場を席巻することはないだろう。
しかし筆者は、アップルが「いかにしてオーディオ製品に変革をもたらそうとしているのか」を象徴する製品として、今後、進んでいく道筋を示すために開発したハイエンド製品だと捉えている。
アップルが狙っているのは、独自の半導体とソフトウェア技術でもたらす、従来の競争軸とは異なる競争軸を生み出し、新たな価値を生み出すイノベーションを引き起こすことだ。
例えばiPhoneに搭載されているカメラ。スマートフォン内蔵カメラにはサイズの制約があるため、画質や表現力を高めることに限界があると考えられてきた。しかし近年、光学的な改良だけでは達成できない画質、性能を演算能力で解決しようとしている。
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