東証に行政処分、システム障害の「真因」は何か 開発は富士通頼み、求められる「装置産業化」
売買代金シェアで38%を占める外資系証券会社は全社、「再開は可能」と回答した。だが、東証は、準大手・中小証券会社で多く使われている証券会社側の受発注システムのベンダーが「再開できるかわからない」と回答したことから、売買再開に対応可能な取引参加者は50%のシェアに満たない可能性が高いと判断。宮原社長が終日売買停止を決定し、午前11時45分に対外公表した。
10月1日に通常どおり8時から注文を受け付け、8時30分に売買停止を判断したのは、富士通が復旧作業に手間取っていたからであり、報告書は「東証の対応及び判断に問題があったとまでは評価すべきものではない」とした。
また、午前11時台に終日売買停止の判断をしたのも、「(売買を再開すれば)取引参加者に更なる混乱を生じさせる恐れが高い状況にあったと考えられるから、終日売買停止という判断内容には合理性があると認められる」と評価した。これらを踏まえ、調査委員会は「(東証の)いずれの判断も、不合理であったとは認められない」と結論づけた。
残る「東証会員制時代」の発想
ただ、調査委員会はいくつかの問題点も指摘している。たとえば、午前8時からの注文受け付けについて。どのような場合に注文を受け付け、どのような場合には受け付けないかという判断を、いつ、どのような手続きを経て行うのかがルール化されていない。この点について「十分に検討されていたとはいえない」とし、売買停止を決定する手順なども「事前検討は十分なものではなかった」と指摘した。
報告書に明確に書かれてはいないが、今回のシステム障害の背景にあるのは、会員組織時代からの古色蒼然とした発想だ。2001年に会員制を廃止して株式会社になった後も、東証と直接取引できる会員権を取得した証券会社を中心とする発想は変わっていない。それは、終日売買停止を決めるうえで外資系証券よりも国内証券の声を重視した経緯に現れている。
11月30日に会見した調査委員会委員長の久保利英明弁護士は「(会員制以来の)歴史的経緯にこだわっていては世界に伍してやっていけない」と東証の姿勢を批判した。
また、証券取引の高速化に対応するためにシステムを増強したにもかかわらず、開発は富士通頼み。東証がシステム装置産業へと脱皮し切れていないのも問題だ。
久保利氏は、「これからの金融市場の運営会社は装置産業としてシステム開発にそうとうコミットメントしないと世界に遅れる。IT能力の強弱が取引所の強弱になる時代がもう来ているのではないか。IT人材の育成など何年、何十年かかるかわからないが、そうとう急いで装置産業化を進めないといけない」と述べ、東証の自己変革を求めた。
菅義偉首相は「国際金融都市構想」を掲げている。だが東証の実態は、国際金融都市とはあまりにも懸け離れているようだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら