コロナワクチンに期待しすぎるのは危ない理由 上昌広「別の対応を取ることも念頭に置くべき」

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日本人はワクチンに対する信頼が国際的に低いのだが、その背景には国家への根深い不信がある(写真:Geber86/iStock)
新型コロナ治療薬とワクチンはどこまで期待できるのか。コロナ発症後の治療薬としては富士フイルム富山化学のアビガンや米国ギリアド・サイエンシズ社のレムデシビルなどの名前が挙がっており、発症予防薬としてのワクチンについては、欧米中ロ各国が莫大な費用と人材を投入して開発競争に血道を挙げてきた。
アビガンについては、富士フイルム富山化学が10月16日、厚生労働省に製造販売の承認を申請した。安倍晋三前首相自らが5月の記者会見で「今月中の承認をめざしたい」と明言していたものだが、治験参加者が想定通り集まらず、ようやく申請の運びになったものだ。
治験(臨床実験)には156人が参加、アビガンを服用すれば解熱や肺機能の改善が進みPCR検査の結果が陰性になるまでにかかる日数の中央値が11.9日で、偽薬を飲んだ患者より2.8日短くなった、という。決して多くはない治験数と2.8日という改善短縮期間を総合的にどう評価するか。
アビガンはもともと、動物実験で胎児に奇形が出るおそれがあるとわかっており、妊娠中やその可能性のある女性らには使えないという限界もある。
また、日本でコロナ治療薬として特例承認されているレムデシビルについても、WHOが10月15日、WHOが主導する世界30カ国の病院での国際的な治験結果として、他の3薬と共に患者の死亡率や入院期間を減少させる効果が「ほとんどないか、全くなかった」という暫定的な研究結果を発表した。
3薬は、「インターフェロンベータ 1a」と、すでに治験停止を明らかにしていた「ヒドロキシクロロキン」、「ロピナビル・リトナビル」。いずれも、マラリアやエイズウイルス(HIV)など、もともとは他の疾患やウイルスに対する治療薬として開発されたもので、新型コロナへの効果が期待されていた。
これらの動きをどう見たらいいのか。「感染症ムラ」に忖度せず、世界の最先端研究を吸収する東大医学部卒の臨床医・上昌広氏へのインタビューを綴った『日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか』の一部を抜粋、再編集してお届けする。

メガファームは世界中を転々として治験を展開

――レムデシビルとかアビガンは本当のところ、治療薬としてどの程度期待できるのでしょうか?

上 昌広(以下、上):コロナ治療の特効薬というのはありません。有効性が確認されたと言われたレムデシビルでさえ、WHOの国際的治験では効果がほとんど見られない、とされました。そもそも説得力のある治験結果を出すためには、膨大な数の患者さんが必要です。だから世界のメガファームはあたかも漁師のように患者がいるところを目指して世界中を転々とするんです。中国のワクチンメーカーが南米で大々的に治験をやったりしています。

アビガンの富士フイルムはそんなノウハウを持ってませんよね。国内で少数しか治験していないのに承認を出す。こういうことが、将来的に信頼を損ねていきます。実際に効くかどうかわからず、効かない薬を効くと言いかねないからです。富士フイルムが国内で実施している治験は、登録患者数が156例で、単盲検(プラセボを用いているものの、医師には自分が担当する患者がアビガンかプラセボのどちらに割り付けられたかわかる)、かつ軽症者を対象にしています。

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