明石家さんま「人生で一番ウケたネタ」の中身 人を笑わせることに人生をかけた男の高校時代

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高校3年生になった高文は、毎年、春に行われる新入生に向けてのクラブ説明会に、サッカー部の副キャプテンとして参加することになった。クラブ説明会は体育館で行われ、各クラブの代表者が順番に演壇に立ち、クラブの活動内容や功績を簡潔に紹介し、新入生を勧誘していく。高文は「1番目に紹介させてほしい」と願い出た。

どのクラブの代表者も紹介文が書かれた紙を持っているが、高文は何も持たずに壇上に上がる。新入生は静かに壇上の高文を見つめていた。

「えぇ~、サッカー部の杉本です。わがクラブは……」

高文は得意の漫談口調で冗談混じりにクラブ紹介を始めた。静まり返っていた新入生たちの間からクスクスと笑い声が漏れてくる。紹介を終えると、高文は大きな拍手を浴びながら、壇上から降りた。 

壇上を降りると、バスケ部のキャプテンが…

すると、2番手のバスケットボール部のキャプテンが高文に駆け寄った。

「杉本、バスケ部の紹介もやってくれへんか? 頼むわ」

「おぉ、ええよ」。高文はふたつ返事で再び壇上に上がり、バスケットボールを片手に、先程と口調を変えて紹介を始めた。

「えぇ~、バスケットボール部の杉本です。このバスケットボールに君の青春をかけてみないか」。新入生たちは大声で笑い出した。

「ご清聴ありがとうございました~!」紹介を終えると高文は足早に壇上から降りる。

すると今度は、「俺んとこも頼むわぁ」と、3番手のテニス部のキャプテンが頼んできた。

「よっしゃ、まかしとけ」3度目は、高文が演壇に立つだけで体育館は笑いに包まれた。

「次は? 放送部? よっしゃ、まかしとけ!」

結局、高文は21のクラブすべて紹介し、新入生たちが疲れ果てるほど笑わせた。

さんま「あれがねぇ、俺の人生でいちばんウケたの。もうねぇ、3つ目のクラブから出るだけで大爆笑になるの。“うちのクラブはこうこうで”とか説明して、次、バーって出て行って、“俺は~相撲部の杉本じゃ~”とか言うたら、ドッカーン、ウケんの。その次、メガネ借りて、“そろばん部の杉本です、よろしくお願いします”とか言うて。もうあの笑い声が今でも忘れられない」(『さんまのスーパーからくりTV』2013年5月19日)

ある日のこと。全身にトイレットペーパーを巻きつけた高文と康雄は、2階の窓から身体をロープで吊るし、1階の教室で授業を受けている生徒たちを笑わせようと、友人らの手を借り、降りていった。

高文は1階の生徒たちの視線を一身に浴びると、「ミイラ男だぁ~!」と声を上げ、笑わせることに成功するが、遅れて降りてきた康雄はうまく着地することができず、地面に尾骶骨(びていこつ)を打ちつけ、唸り声を上げた。すると、高文の天敵だった教師、乾井が現れ、2人を追いかけまわした。トイレットペーパーでぐるぐる巻きになった高文と康雄を、真剣に追いかける学校一怖い教師。

多くの生徒たちが、運動場で繰り広げられているその追跡劇を目撃し、大爆笑した。高文は校舎から声援を送る生徒たちを見渡しながら、「康雄~! 見てみぃ~! みんなめちゃくちゃ笑ろてるぞぉ!」と叫び、満面の笑みを浮かべた。

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