倒産だけじゃない企業のさまざまな「死に方」 そもそも企業が生きているとはどういうことか
はっきりわかるように、これらの曲線の全体的な構造は、データの切りわけ方によらず、そして企業を個々の事業部門に分類しても、ほぼ同じだ。どの例でも、生存企業の数はIPO(新規株式公開)直後から急激に減り始め、30年後に残っているのは5%に満たない。同様に死亡率曲線も、50年も経てば死んだ企業数がほぼ100%に達し、そのほぼ半数が10年以内に死んでいることを示している。
こういう結果は、企業の死が倒産と清算によるものか、合併と吸収によるものかで敏感に変わるはずだと思うかもしれない。だがご覧の通り、どちらも非常によく似た指数関数的な生存率曲線を描き、死亡率曲線でも値が若干違うだけだ。企業が属する産業部門でも、結果が変わりそうなものだ。
10年以上続く企業は役半数
例えばエネルギー部門をIT、輸送、あるいは金融部門と比べると、業界力学と競争市場原理はかなりちがいそうだ。だが驚いたことに、どの産業でも似たような指数関数的な時間スケールの生存率曲線が見られる。どんな産業でも、死亡原因が何であっても、10年以上続く企業は約半数しかない。
これは、企業を事業カテゴリーで分類しても、企業がおおむね同じようにスケールすることを示す分析と一致している。どの産業部門内でも、全企業コホートで見られる指数に近い指数のべき乗則が定着している。言い換えれば企業の一般動態と全般的な生命史は、実質的にそれらが属する事業部門の影響を受けない。
これは実際にそれらの商業活動、あるいは最終的に破産するのか他社と合併するのか買収されるのかとは無関係に、それらの大ざっぱなパターンを決定する、普遍的な原動力が働いていることを強く示唆している。要するに、これは定量企業科学という考え方を、強力に裏付けているのだ。
これは本当にかなりすごいことだ。経済生活の変動、不確実性、予測不可能性と、成功と失敗を経て死に至るまでの無数の個別意思決定や事故に対処しつつ、市場のなかで自社を確立して活動を続ける企業の誕生、死、生活史全般を考えるとき、それが全体としてこんな単純な一般規則に従っているというのは、なかなか信じ難い。この驚くべき事実は生活史の明らかな独自性と個性にもかかわらず、生命体、生態系、都市が同じような一般的制約を受けていることへの驚きと呼応している。
企業が示すような指数関数的な生存率曲線は、バクテリア・コロニー、動物や植物といったその他の多くの共同体システムや、放射性物質の崩壊にさえ見られる。コミュニティ構造と社会組織の恩恵を受ける定住性の社会生物になる前の、有史以前の人類の死亡率も、これらの曲線に倣うはずだ。現代の人類の生存率曲線は、標準的な指数関数から50年にも及ぶ長い横ばい状態を発達させ、今や私たちは狩猟採集民時代の祖先に比べ、平均でかなり長生きするようになった。だが最長寿命については以前とほぼ変わらないままだ。
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