ユーザベース、「アメリカ進出失敗」の舞台裏 CEOが辞任、コロナ以前からあったもくろみ違い

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これに対し、梅田氏はこれまでの説明会で「『さらに広告が減少するとしても、一層有料課金にシフトする』という意思決定をした」と言及。有料課金事業の立ち上がりが順調なことを強調し、「(有料課金と)総合すると、計画通りに推移している」と話していた。

そこに直撃したのが新型コロナウイルスの感染拡大だ。全米がロックダウンとなり、大手・中小にかかわらず広告主の出稿意欲が低下する中、クオーツの広告事業も大打撃を受ける。2020年第1四半期(1〜3月)時点で、広告事業の売上高が大幅に縮小。クオーツ社全体でも売上高が前年同期比で半減した。

こうした事態を受け、ユーザベースはクオーツ社の広告事業の人員を中心に、全体の4割に当たる約80人のリストラを実施。その後もクオーツ社の有料課金は着実に伸びてはいくものの、広告事業の不振を補うにはほど遠かった。

グローバル展開はあきらめない

ユーザベースが8月に行った第2四半期(4~6月)の決算説明会で梅田氏は、「来期(2021年)までに収益化の道筋がついているかどうか。もし年内に見込めなければ、さらに一段踏み込んだドラスティックな判断をする腹積もりだ」と話し、これまで貫いてきた強気の姿勢を一転トーンダウンさせた。

最終的な撤退判断の背景となったのは、クオーツの経営が外部環境依存から脱却できなかったことだ。広告市況に大きく左右される状態では、新型コロナの影響が収束しても、再度悪化する懸念が常に付きまとう。「(クオーツ社内の雰囲気が)市況の好転を祈るようになっていたのが(撤退判断の)最後のトリガーだった」(梅田氏)。

とはいえ、今回の失敗でユーザベースがグローバル展開をすべてあきらめたわけではない。同社のミッション(社是)は「経済情報で、世界を変える」で、梅田氏も「今回の反省を踏まえ、いかに確実度を増していけるか、もう一度作戦を練る」と前を向く。

実際、ユーザベースは経済情報の収集・分析サービスを提供する「SPEEDA(スピーダ)」とスタートアップのデータを提供する「INITIAL(イニシャル)」を掛け合わせたサービスを、試験的に海外展開している。ここで手応えを得られれば、顧客開拓を加速するため踏み込んだ投資を行っていく予定だ。

クオーツ社への投資をめぐっては、今回の決算説明会で「ナイスチャレンジでした」という労いの言葉も出た。IT・ネット企業の強豪がひしめくアメリカ市場で、日本勢が成功することは決して簡単ではない。巨額投資に敗れたユーザベースだが、失敗を糧に別の成果に結びつけられるか。新体制となった経営陣の手腕が問われる。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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