ユーザベース、「アメリカ進出失敗」の舞台裏 CEOが辞任、コロナ以前からあったもくろみ違い
一方、クオーツ社の事業モデルは広告収入一本足で、大型広告主の業界動向など外部環境の影響を受けやすく、不安定だった。課金プランの導入や事業モデルの転換を模索していた矢先に、提携話を持ちかけたのが梅田氏だった。
現地の編集機能を必要としていたユーザベースと、課金のノウハウを得たかったクオーツ。両社の思惑は一致した。
だが、そのタッグはわずか2年半であえなく幕引きとなった。今回の売却の理由について、新型コロナウイルスの感染拡大によって広告市況が悪化し、「買収当初に掲げた3年間で黒字化させるという目標の達成が困難な状況」(同社)になったとしている。ただ、コロナ前の業績が順風満帆だったかというと、決してそういうわけではなかった。
早々に崩れた成長シナリオ
そもそも買収時、クオーツ社は赤字会社だった。ユーザベースがクオーツ社の成長戦略として掲げたのは次のようなものだ。まず、新たな広告主の開拓などで既存の広告事業は2019年の黒字化を目指す。一方、同年には有料課金ビジネスを新たに立ち上げ、3年後の2021年までに広告事業と合わせてクオーツ全体で単年度黒字化を目指すというものだ。
しかし、このシナリオは早々に崩れる。買収翌年の2019年、クオーツ社の広告売上高が前年比22%減少したのだ。最大の要因は「組織の混乱があった」(梅田氏)ことだという。
クオーツは前述のとおり、もともとユーザーに無料でサービスを提供し、広告で稼ぐビジネスモデルだった。ユーザベースによる買収後、有料課金モデルへの転換を図ったが、広告営業チームの中心を担っていた社員がその方針に反発、退社してしまったのだ。
「広告事業を立ち上げてきたメンバーからすると、(ユーザベースが)新しいオーナーになって有料課金がファーストプライオリティ(最優先)だと言われると、おもしろくなかったところもあったと思う」(梅田氏)
これにより、広告営業の力は大幅に落ちてしまった。当初計画していた2019年内の広告事業の黒字化は絶望的となり、同社の決算説明会では「(クオーツは)買収当時と企業価値が変わってしまったのでは」などという厳しい言葉がぶつけられるようになる。
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